伝統文化がよく保存されている関西地方では、伝統的な食べ物も地域によって異なっている。しかも、店舗の内装の雰囲気もそれぞれの地域の異なる風俗を反映していて、とても興味深い。
京都は千年の古都であり、街角の小さな店にも優雅な雰囲気が漂っている。高級な料理屋となれば、もちろん古風な畳が敷かれ、食器も精緻に作られた焼き物である。京都の有名な美食は豆腐で、新鮮で柔らかく、口に入れるととろけるようで、生臭さもまったくない。南禅寺附近の京料理店「ぎんもんど」は、湯豆腐を楽しめる名店である。いろいろな料理が、味もおいしく、盛り付けも美しく、まさに芸術品と言えるほどだ。そしておいしい料理と同じぐらい惹きつけられるのが、ぎんもんどの庭園である。畳の上で低いテーブルについてふと横を見ると、全面がガラス障子になっている。巻き上げられた竹のすだれの向こうは日本庭園で、小さな橋があり、水が流れ、松やカエデが植えられて、どこもかしこも優雅な雰囲気で満たされている。
湯豆腐だけでなく、各種の大豆製品は京都の美食の誇りである。清水寺に向かう石畳の周囲では、中華まんじゅうの店で豆腐餡のまんじゅうまで売っていて、食感はプリンのように柔らかく、淡い味わいで後味もよく、そのすばらしさは形容できないほどだ。また湯葉を入れたうどんもあり、滑らかな湯葉と弾力のあるうどんを組み合わせ、青ネギを散らし、紅葉の形に切ったニンジンを一枚のせれば、季節を味わうような一品になる。
琵琶湖は日本最大の淡水湖で、琵琶湖を擁する滋賀県は経済の中心ではないが、料理店は素朴で庶民的な雰囲気で、京都のように優雅なために緊張させられるようなところがまったくない。琵琶湖の名物の一つは、よもぎうどんである。よもぎが入っているので、うどんが緑色をしていて、見ただけで爽やかである。さらにニシンを切ってのせれば、いかにも和風の雰囲気いっぱいになる。さらに――あるいは琵琶湖の落日を鑑賞した後で気持ちがゆったりとして、食欲が出たのかもしれないが――よもぎの爽やかな香りとにしんのうまみが溶け合って非常においしく、食べた後にも余韻が残った。
大阪はもともと「天下の台所」と言われるほどで、この文の最後を締めくくるのに適役である。大阪には美食と言えない食べ物はないぐらいで、有名なたこ焼きやお好み焼きはもちろん、どこでも売っていて日本から発したわけでもないチーズケーキも、大阪のものはとびきりおいしい。大阪の中心地区の一つである難波には「りくろーおじさんの店」というケーキ店があり、店内ではチーズケーキ、ロールケーキ、プリン、エッグタルトなどの様々なスイーツを売っている。その中で最も有名なのは、看板商品のチーズケーキである。チーズケーキがオーブンからカウンターまで運んでこられて、乳白色のケーキが熱気を帯びて柔らかく揺れているのを見ただけで、口の中に入れた時の香りとおいしさが想像できるぐらいである!ふわふわとした食感と、濃厚な卵の香りと、温かなチーズが口の中で混ざり合った時は、本当に幸せな気持ちになった!店の前に朝から晩まで長い列ができているのも、なるほどと思わされる。(李薊執筆)