2012年8月31日 第33号(通巻第327号)

記録再生の新しい時代を開く

カメラは、1839年にフランス人のダゲールによって発明された。人類は何らかの方法で一瞬のうちに消え去ってしまう時間の中に出現した情景をそのまま記録したいと夢見てきたが、カメラが発明されたことによって、この夢がついに現実に向けて大きな一歩を踏み出したのだ。1874年、フランス人のジュール・ランサンがビデオカメラを発明した。これ以降、過去の情景は静止画像だけでなく、流れる情景も記録できるようになった。そして1877年には、ついに確認された人類最初の録音が出現した。これ以降、画像だけでなく音声も記録できるようになった。現代の映画やテレビの映像作品は、いずれもこの長い歴史の土台の上に立っている。そして今、過去の映像の再生手法について、さらに飛躍的な一歩が踏み出された。代替現実(SR)システム、そしてそれを応用した体験型アートパフォーマンスMIRAGE(ミラージュ)が、歴史の舞台に登場したのである。

理化学研究所脳科学総合研究センター・適応知性研究チームが開発したSRシステムでは、SF映画に登場するようなヘッドフォン一体型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が用いられる。ユーザーは、パノラマビデオカメラにより記録された「過去」映像か、HMD前部に設置されたカメラを通して映し出されるリアルタイムの「現在」映像を見ることができる。ヘッドフォンからは、映像に同期して、過去あるいは現在の音声が流れる。本システムの鍵は、過去映像音声と現在の映像音声を、主観的には区別できない形でユーザーに体験させる仕組みになっていることである。すなわち、ユーザーにはどれが「現在」でどれが「過去」なのかがわからない。そのようにして「過去」が「現在」へと侵入し、異なる時間軸にいる人や事物が交錯する。

8月24日から26日の三日間、SRシステムを用いた体験型パフォーマンスMIRAGEが行われた。これを手がけたのは、アートパフォーマンスグループGRINDER-MANである。会場では、ダンサーによるライブパフォーマンスが、HMDを装着した一人の「体験者」の目の前で繰り広げられる。しかし体験者が実際に体験しているのは、ライブパフォーマンスそのものではない。あらかじめ記録された過去のダンスパフォーマンスが、SRシステムによりライブパフォーマンスに重なり合わされ、交錯する。過去か現在か、そういった問いが無効となる地平でパフォーマンスは進行し、およそ10分後、パフォーマンスの終了とともに体験者は現実へと帰還する。会場にいる観客には、また別の驚きが提供される。会場のスクリーンに映し出される体験者視点の映像をみることにより、観客自身のライブパフォーマンス体験と、体験者の体験があるときは重なり、あるときは全く別のものに分岐していることに気付く。そのようにして、MIRAGEというパフォーマンス作品がきわめてユニークな多層性を有したものであることを感じ取ることとなる。

SRシステムは従来の意味での映像や音声の記録再生手法を逸脱し、媒体の制限を飛び越えて、「過去」を「現在」として再生する。そして今回MIRAGEが、本システムを用いてこれまでにないパフォーマンス表現の領域を切り開いた。今後さらなる発展改良が期待されるが、「過去」の体験手法と応用について、新しい扉が開かれたことは間違いない。 (李薊執筆、渡辺隆彦撮影)

写真提供:理化学研究所脳科学総合研究センター

MIRAGE http://mirage.grinder-man.com/  SR system http://vimeo.com/40499445 (ビデオ)

缶コーヒーとミニカー

今コンビニでサントリーの缶コーヒー「ボス超」を買うと、アウディのミニカーがついてくる。今回のボス アウディコレクションは、1缶に1台ついてくる小型ミニカーが7種、2缶セットについてくるダイキャスト製ミニカーが9種で、計16種となっている。全部集めたかったら、ボス超を25缶買わなければならない。種類が多いのはいいことだが、全部集めようと思うと大変だ。現行のモデルから歴代のモデル、モーターショー出展の車種、ル・マン24時間レースで優勝したマシンまで、内容も多彩だ。サイズがいろいろなので、一緒に並べるとバランスが悪いように感じるかもしれない。好きな車だけを選んで買うのもいいだろう。アウディの車を持つ人も多いだろうから、興味があれば、自分の愛車と同じミニカーを選んではいかがだろうか。

ここで、今回選ばれた車をご紹介しよう。1缶用では、古典的な車で、社名が「アウトウニオン」だった頃の「アウディ72」、1980年代の世界ラリー選手権でフルタイム4輪駆動を常識にした「アウディ クワトロ」、「A6アヴァント」と、その先祖にあたる3代目「アウディ 100 アヴァント」、現行車種の「A4」セダン、高級5ドア・クーペ「A7 スポーツバック」、中型の4シーター2ドアクーペ「A5」にV8エンジンを積んだ「RS5」である。2缶用は、現行車の高級SUV「アウディQ5」、「A8」のロング・ホイールベース版でW型12気筒エンジン搭載の「A8L W12」、ミドシップ・スーパーカー「アウディR8」、スポーツカーで、2008年と2010年のル・マン24時間レースを制した「R10TDI」「R15TDI」などがある。

スーパースポーツでは、1991年の東京モーターショーに出展されたW12気筒搭載の「アウディ アヴス クワトロ」と、2000年のパリモーターショーで公開された「アウディ プロジェクト ローゼマイヤー」がある。この2台はプルバックではなく、前に押すと走り出すタイプで、LEDのライトがついている。電池式ではないのであまり明るくないが、懐かしい雰囲気は味わえる。このイベントは、景品がなくなり次第終了になる。このイベントに参加していないコンビニもあるのでご注意を。また手に入れたかったら、なるべく早くコンビニに行ってみてほしい。(ff執筆)

(C)2012 SUNTORY HOLDINGS LIMITED.

サントリー ボス アウディコレクション http://www.suntory.co.jp/softdrink/boss/campaign/audi/index.html

段文凝の著書サイン会

2011年3月から、NHKの「テレビで中国語」に登場した中国人アナウンサー段文凝さんは、このところ日本での人気がますます高まっている。早稲田大学でジャーナリズムを学ぶ院生でもある彼女は、中国語学習番組に出演するだけでなく、日本のメディアで若い中国人女性としての考え方を発信している。これまでに、朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、韓国KBS(テレビ局)などのメディアが彼女に対して取材を行っている。これらの取材で彼女は、時事的な評論などをするわけではないが、生活の中で見聞きした様々なことを語って、中国人は決して考えていたように遠い存在でもなく、コミュニケーションをするのが難しい人々ではないと、中国に関心を持つ日本人に感じさせている。

今年の7月23日、段文凝さんはPHP研究所から「日本が好き!」というエッセイを出版した。この本では、彼女の成長の過程と、見知らぬ異国に来てその生活になじむまでの様々な思いをつづっている。この本は発売されるとたちまち売り切れてしまい、買おうとする読者はオンライン購入するしかなかったとそうだ。8月22日、「日本が好き!」について、東京でトークイベントとサイン会が行われ、その様子がUSTREAMなどで中継された。イベント会場は収容力に制限があるが、参加希望者が非常に多かったので、主催者側は抽選をするしかなく、最終的に希望者の三分の一が入場することができた。

ある読者はこう語った。「私はあなたの番組を見たことがなく、書店をぶらついていて偶然この本を買いました。ところがこの本は私に思いがけない驚きと喜びを与えてくれ、中国の若者の考え方を理解することができました。あなたの本を読んだことで、私は日中両国の将来を信じることができるようになりました。」記者の取材に対して、段文凝さんは本を出版した動機について語った。「私は中国について書いた日本語の本をたくさん読みました。どれも日本に2〜30年住んでいる先輩たちが書いたもので、彼らの世代の人々の当時の中国に対する記憶に満ちていました。でも現在の中国や、新しい世代の中国人の考え方は、すでに変化していると私は思います。私は自分の本を通じて、現代の中国と中国の若者についての新しい認識を得てほしいと思いました。機会があれば、この本を中国語に翻訳して、中国でも出版したいと思っています。」(凱特執筆、撮影)

PHP研究所/「日本が好き!」 http://www.php.co.jp/news/2012/07/duan.php

トイカメラのカメラマン

旅行や日常生活の様々な場面をカメラで記録するのが好きな人は少なくないだろう。市販されているカメラの種類はたいへん多いが、デジタルカメラ以外のカメラでの撮影を試してみたら、新しい発見があるかもしれない。今日はみなさんに、トイカメラと、トイカメラのカメラマン、雨樹一期(あまき・いちご)さんをご紹介しよう。

トイカメラとはもともと、カメラを構成する素材のほとんどが合成樹脂で、組み立て構造が簡単で、価格も安いカメラを指す。だが現在はやや変化があり、かなり精密に作られた一部のカメラもトイカメラに分類される。全体として、トイカメラは一眼レフカメラと違ってどこか不完全なところがあるのだが、その不完全なところがかえって面白味となっている。輪郭がくっきりしていることを強調する一眼レフと異なり、トイカメラの撮影効果はややぼんやりしてはっきりしないとも言えるが、それによって撮影時の独特な雰囲気を表現できるのである。またフィルムの選択によって、トイカメラは様々な色彩や撮影効果を出すこともできる。

トイカメラのカメラマン、雨樹一期さんは、1977年5月14日に大阪に生まれた。デザイン学科を卒業後、フォトカードブランドの「SNAP-SHOT」の契約作家として、全国の大手雑貨店で作品が販売された。初めての「ポスター展作家対決」では、新人ながら人気投票で連続一位となった。「しあわせの観覧車」などの写真集があり、東京、大阪、パリで写真展を行っている。現在は雑誌にコラムを連載すると同時に、コンテンツとして写真を提供、講師として撮影技術を教えるなど、幅広く活躍している。

雨樹一期さんは、観覧車、花、猫、空、自然の風景などを撮影するのが好きだ。彼のブログに載っている、「桜と日本最古の観覧車」「ポピーと葛西臨海公園の観覧車」の二枚の写真はとても感動的だ。桜の花の色は明るく、活気に満ちた春を感じさせ、心まで明るくしてくれる。ポピーの写真の時間は黄昏時なので、花と観覧車が柔らかい光をたたえ、とても懐かしい気持ちになる。彼の撮影した観覧車の写真を見ていると、乗ったことのあるものは懐かしくなり、乗ったことのないものは乗りたくなる。それは雨樹一期さんのトイカメラによる傑作の魔力に違いない。(秋桜執筆)

写真提供:雨樹一期

雨樹一期公式サイト http://www.amaki15.com/   雨樹一期のブログ http://cat.amaki15.com/

日本のサービスの原点

日本はサービス第一の国だということには、みなさんも大いに賛成してくださいますよね。仕事の関係で頻繁に日本に行きますが、ショッピングだけでなく、レストランのサービスの質にも大いに満足しています。例えば温泉旅館では、到着から出発まで、送り迎えも食事も宿泊も、至れり尽くせりのサービスにとても温かい気持ちになります。西洋式のホテルでは、温泉旅館ほど従業員との直接の接触はありませんが、お客さんが部屋に入る前に、彼らはすでに歓迎のための準備をしっかり行っているのです。

その中でも私が最も気遣いを感じるのは、部屋の中にその部屋を掃除した責任者の名前を書いたカードが必ずあり、ホテルの規模が大きいか小さいかに関わらず、部屋の引出しの中や机の上に必ず「支配人への手紙」が置かれていることです。開けてみると、中には大体宿泊の感想に関するアンケートが入っていて、ホテルに対する提案を書く欄もあります。私はアンケートに書き込んでカウンターに持っていったことがありますが、驚いたことに、プレゼントをもらってしまいました。こうした細かいことは取るに足りないことのように思えますが、これらによって私は彼らの心配りを一つ一つ感じることができるのです。

六月に大阪に講演に行った時の、梅田駅付近のあるホテルのことを思い出します。その日、私はコップに入った水を全部飲まないまま、慌ただしく出かけました。夜部屋に戻って、私は感動的な光景を目にしました。そのコップは少しも動かされず、水が捨てられもせず、上には紙が置かれ、そこには「掃除の時に判断できなかったので、このままにしておいたことをお許しください。」と書いてありました。もちろん彼らは、私のために新しいコップも用意してくれました。普通なら、これを飲み残した水と判断して、捨ててしまってもおかしくありません。でも水を残しておいて、部屋に戻ってから飲もうとするお客さんもいるかもしれないと考えて、彼らは何の処理もしなかったのです。私はその紙を読んだ時、掃除係の人が机の前で、一杯の水のために慎重に考えている様子が頭に浮かびました。たった一杯の水のために?いいえ、たとえたった一杯の水であっても、と言うべきでしょう。お客様のものであれば、すべて大切にするという態度を持つことが、私に深い印象を残したのでした。
 
先日、私は日本の友人に、ある物を台湾に送ってくれるように頼みました。包みが届いた時、私はその上に貼ってある紙に気がつきました。そこには、「運送会社のみなさん、これは受取人が非常に楽しみにしているものなので、すみませんが気を付けて運んでくださるようにお願いします。」というようなことが書いてありました。この紙を見た時、私は日本人のサービスの原点が何であるのかを真剣に考えました。最も簡単な言い方をすれば、それは「お客様の立場に立って考える」ということではないでしょうか。一人一人が相手の立場に立って考え、物事を処理することができたら、世界はとても平和ですばらしい場所になるに違いありません。日本のサービスの原点に乾杯!(哈日杏子執筆、撮影)

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  哈日杏子のブログ http://harikyoko.wordpress.com/ (中、日)

第33回 人形町

【人形町の概要】百年の歴史を持つ街である。浅草と同じように有名だが、浅草より静かで落ち着いている。生活の息吹が感じられるため、とても人気がある。老舗の名を誇る大小の飲食店や、和菓子や洋菓子の店、特色のある食品店、さらには今日まで技術を伝える伝統工芸品の店もあり、甘酒横丁、繊維問屋街、せともの祭り、べったら市などが有名で、和風の雰囲気いっぱいである。テレビドラマ「新参者」の舞台でもある。

【人形町の歴史】400年前の徳川家康の時代に、江戸歌舞伎の発信地として盛んになった。その後、一般市民を対象とした人形浄瑠璃が発展し、この地域は人形制作者や人形遣いの住む町として大いに発展した。江戸幕府が開かれてから400年間、ここは様々な人々の生活や伝統を支え、今でも昔の人情や歴史の温かさを感じる街である。

【人形町の水天宮】庶民的な気分に溢れる、安産などで有名な神社である。安産祈願、海難防止、商売繁盛などにご利益がある。「戌の日」の祈願のために、多くの妊婦やその家族が訪れる。毎月5日には、楽しい縁日が行われる。1月に行われる「初水天宮」の日には、多くの人がつめかけてたいへん賑やかになる。(姚遠撮影、執筆)

タイトル:「時計台」
場所:甘酒横丁附近
撮影のポイント:通りの間に立つ「からくり時計台」である。見上げるように撮影し、高さを強調すると共に、母親が子供に沐浴させ、子犬が戯れる、風情のある絵をはっきりと表現する。
使用フィルタ:Nashville+彩度−フレーム(曇ったような天気を作り出す。フレームを除去して情報量を増加する。)
タイトル:「晴天」
場所:水天宮
撮影のポイント:神社の入口にある階段から見上げて、門の上にある巨大なマークを撮影した。警備員の厳しい姿と、周囲のマンションや民家が、不思議なアニメのような構図を作っている。
使用フィルタ:Lo-fi+彩度(青空の雲と金属の質感を強調する。フレームが装飾効果を上げる。)

タイトル:「静寂」
場所:人形町交差点付近
撮影のポイント:大観音寺の入口附近の、様々な色ののぼりが、石灯籠と共に静かで厳粛な雰囲気をかもし出している。構図を選ぶ時、できるだけテーマと関係のない要素を排除し、画面全体を簡潔明瞭にした。
使用フィルタ:Earlybird+彩度(昔の雰囲気と効果を出し、「歴史感」を体験できるようにする。)
タイトル:「今昔」
場所:堀留町バス停
撮影のポイント:人形町一帯の歴史を最も感じさせる、昔と今のポストの対照。目の高さで対象を撮影する構図を採った。長い歴史が、二つの異なるポストによって感じられ、深く考えさせられる。
使用フィルタ:Hefe+フレーム(色彩のコントラストを増して強調する。フレームを除去して情報量を増加する。)

人形町商店街 http://www.ningyocho.or.jp/

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