青春のデザイン
デスクの上に並ぶデザインの巨匠たちの作品集の傍らに、あまり目立たない一冊の白い小冊子が置かれている。表紙には「インスピレーション」を表す、一列にならんだ電球が描かれ、小さな字で「PBL−15」と書かれている。この冊子をめくるたびに、青春と知恵の熱気に包まれるような気分になる。冊子を閉じて考えに沈むと、心の底から感慨が湧いてくる。
2年前から、多摩美術大学の学生たちは「PBL(Project Based Learning)」という新しい計画の中に身を投じた。それは「新しい生活」をテーマとして、斬新なアイデアによって日常用品を自由にデザインして開発するというもので、「PBL−15」は学生たちのここ半年におけるデザインの集大成なのだ。
普通の扇風機は、部屋のすみにある鉄のかたまりに過ぎないが、高野菜々絵さんはそれを「生活に咲く一輪の花」に変えてしまった。「花咲く扇風機」の2つの朝顔たちは茎を湾曲させ、時には屋外の日の光に顔を向け、時には恥ずかしがりの姉妹のようにカーテンにからみつく。世界に2つとないこの扇風機を使えば、きっと生活の中に爽やかな風がもたらされるだろう。
空のソーサーと雲のカップ。飲み終わると、雲のカップは溶け合って空のソーサーに吸い込まれる。「a fine day」という名のこの作品の作者、山田裕人さんは、作品に濃厚な詩情を与えた。カップの中の牛乳を飲みほすと、透明なガラスのカップの下にブルーのソーサーが見える。憂鬱だった心も、その瞬間に晴れわたって爽快になるに違いない。
「芝生のスリッパ」?――緑の色が、北海道の広々とした原野を連想させる。芝生を模して作られたこのスリッパを履くと、緑が生活の中で身近なものとなる。家の中にいても外の日の光が感じられ、忙しい都会にいても田舎の自然を体感できる。小保内史人さんの小さな創意の中に、本来の姿になって自然に帰るという現代人の憧れが凝縮されている。
慌しい現代人のカレンダーや手帳は、予定がびっしりと書き込まれていて、一日中バタバタしているうちに自分にとって重要な日を忘れてしまう。村岡麻子さんの「b_i_n_g_o」は、ポピュラーなゲームのビンゴから発想したものだ。ベースの赤い紙にあらかじめ自分にとって特別な日を書き込んでおく。その日に「小窓」を開いてそれを思い出したら、きっと忘れがたい日になるだろう。
確かにこれらの小さなデザインは、巨匠たちの傑作とは比べものにならず、まだ成熟していないといえるかもしれない。しかし、こうした青春の情熱に溢れたデザインがあってこそ、我々の未来の生活は輝くものになるのではないだろうか。
「PBL−15」の若者たちの夢が、一日も早くかなうように願っている! |