6月30日に、日本各地の多くの神社では「夏越の大祓、茅の輪」(なごしのおおはらい、ちのわ)の儀式が行われる。この儀式は702年の「大宝律令」で年中行事として定められて以来、今日まで伝えられている。通常日本の神社では、毎年6月と12月の最終日に「大祓」(おおはらえ)を行うが、「祓」とは、人々の罪や穢れを取り去り、災難を遠ざけるという意味である。この二日間に人々は神社に行って神事に参加し、半年間の罪を取り除き、無事を祈ることができる。夏の6月に身を清めるためのこの儀式が、「夏越の大祓」なのである。ここで言う罪や穢れは、別に犯罪のような悪事ではなく、一般には半年間に動物の肉を食べたことによる「殺生の罪」や、自分の不注意で周囲の人にかけた迷惑などを指す。
多くの神社では「大祓」の日に、参拝に来た人たちがくぐるための直径三メートルほどの「茅の輪」を境内に立てる。「茅の輪」とは、災厄を退ける不思議な力を備えていると言われる茅草で編んだ大きな輪である。「茅の輪」のくぐり方には決まりがあり、まず左足でまたいで左回りに回って元の場所に戻り、その後、またくぐって右回りに回り、最後にまた左回りする。つまり、横倒しにした8の字――「∞」を描くように三回回る。このようにすると、流行病にかからず、無病息災で夏を過ごせるのだそうだ。
その後、普通の参拝をすると、神社の神職(宮司)から「形代」をもらうことができる。これは人の形に切った紙で、この紙に自分の名前と年齢を書き、全身、特に具合の悪いところや、病気になったところをこの紙でぬぐって、最後に三回息を吹きかけて封筒に入れる。これは、自分の罪や病気などが形代に移ったことを象徴している。その後の神前の儀式で宮司が、願いを込めた人々を表す形代に祝詞をあげて浄化してくれる。
また、神社からはお菓子や、ススキや、悪運を遠ざけるお札などがもらえる。ススキは玄関の外に飾って魔除けにする。お札は、「悪いことを遠ざける」という意味の言葉が書かれた長方形の白い紙で、玄関を入って最初のドアの枠に12月31日まで貼っておき、半年間の無事を祈るのである。このようにすれば、儀式によって自分の心身を浄化し、心の準備もしっかりできて、これからの半年間、元気でがんばれるのではないだろうか?(秋桜執筆)