桜は日本の国花であり、日本人にとって特別なものであることはよく知られている。しかし、日本人の心の中でもう一つ、春の桜に劣らぬほど重要なものがある。それは秋の燃えるような紅葉である。毎年春になると、桜は温暖な南の地方から北に向かって順に開花し、南から北へと進む「桜前線」が形成される。それとは逆に、秋になると紅葉は北から南へと進む「紅葉前線」を形成するのだ。春と秋、北と南、「紅葉の鑑賞」は「桜の鑑賞」と対を成す、日本人には欠かすことのできない季節の楽しみなのだ。日本を訪れたことのある中国の文豪たちも、この大地を赤く染める秋の素晴らしい景色に陶酔した。郭沫若は「紅葉経霜久、依然恋故枝」という詩を綴り、魯迅は「扶桑正是秋光好、楓葉如丹照嫩寒」という名句を残した。
日本の秋を楽しめる名所は枚挙にいとまがない。自然の風景を純粋に楽しめるのは、紅葉と雪山が共に見られる北海道の小樽や函館である。寺院など建造物と共に眺めるなら、京都の嵐山や、広島の紅葉谷である。筆者が今回ご紹介するのは、関東地方では定番となっている紅葉の鑑賞地、日光国立公園である。日光の人気が高い理由は、東京から車で僅か2時間の距離なのに、都会とはまったく異なる風景を楽しめることである。週末の1日で訪れるのに適しているため、都心に住む忙しい人々の人気を集めているのだ。
日本の歴史に詳しい方は、江戸時代の初代将軍、徳川家康をご存知だろう。家康を祀るために、日本各地にはたくさんの「東照宮」が作られているが、日光は東照宮の総本社である。正門の陽明門には400あまりの彫刻が彫られ、その中でも静かな平和を象徴する「眠り猫」と、「見ざる、言わざる、聞かざる」を表す可愛い猿たちが特に有名だ。朝から晩までずっと見ていても見飽きないと言われたことから、「日暮門(ひぐらしもん)」とも呼ばれる。今日では、日光東照宮は世界遺産に登録されている。
また日光には、日本三大瀑布の一つである華厳の滝と、有名な鬼怒川温泉がある。11万ヘクタールの国立公園には、人々を驚嘆させるような壮大な景色が随所に見られる。そのため、中国人が「長城に行かないやつは男じゃない」と言うのと同じように、日本では「日光を見ずして結構と言うなかれ」という言葉が広く知られている。(凱特執筆)