瀬戸内海の七つの島(直島、男木島、女木島、大島、豊島、犬島、小豆島)と高松市を舞台にして、数え切れないほどの現代アート作品を楽しむことができる「瀬戸内国際芸術祭2010」が、開幕してからわずか1ヶ月で、来場者30万人を突破した!普段は静かな島々が、一気に大賑わいとなっている。高松港から船に乗って30分〜1時間で、大きさも雰囲気も異なる島々に渡ることができる。さあ、一緒にアートの探検に出掛けてみよう。
かつては産業廃棄物の不法投棄で汚染された豊島(てしま)も、最近は棚田プロジェクトの実施に伴って、名前の通りの豊かな美しさを私たちに見せてくれている。青木野枝さんの作品「空の粒子/唐櫃」は、昔は住民たちが集まった取水池のそばにあり、下から仰ぐ大樹や空も作品の一部分と言えるかもしれない。塩田千春さんの「遠い記憶」は、使われていない公民館の中にあり、廃屋の窓をたくさん集めて、不思議なイメージのトンネルを作っている。そこには、かつて生活していた人々の痕跡が感じられる。
女木島は別名を鬼ヶ島といい、有名な昔話「桃太郎」の舞台である。島の中央の北部山頂にやや近いあたりにある鬼ヶ島大洞窟は、昔鬼が住んでいたと言われ、面積4000平方メートルの洞窟内は真夏でも鬱蒼として暗い。空中に浮かんだように見えるのは桃太郎に退治された鬼の塑像で、桃太郎の伝説を生き生きと蘇らせたものである。海辺の遥か遠くに見える帆船は、上海出身の禿鷹墳上さんが製作した「20世紀的回想」という作品だ。近付いてみると、黒い帆船が実はピアノの模型であることが分かる。
男木島の急な坂に沿って立てられている民家は、昔から人々を惹きつけてきた美しい風景である。迷宮のような村落の間の小道に隠された作品は、ここでしか味わえない趣を持っている。船を下りて島に入る時に必ず通過する男木島交流館の透明な屋根に貼られた日本語、アラビア語、ヘブライ語、中国語などの文字は、ジャウメ・プレンサさんの「男木島の魂」という作品である。気がつかないうちに、我々は多文化の中に溶け込んでしまっているのだ。島で集めた廃材や廃船などに描いた絵を民家の外壁に貼り付けた「男木島路地壁画プロジェクト」という作品は、古い民家に新しい命を吹き込んでいる。(緋梨執筆)