広島県の世界遺産は二つある。一つは広島市内にある広島平和記念碑(原爆ドーム)で、1996年に登録された。広島県産業奨励館だった建物が、原爆投下後にも廃墟として残ったもので、核兵器廃絶と永久平和を願うシンボルとなっている。1966年に平和団体の願いを受け入れて、残された半円形のドーム部分をそのまま保存することが広島市議会で決定された。市民と内外からの募金によって、原爆ドームは第二次大戦後もそのままの状態を保ち、人類の負の遺産として、後世の人々に対して警鐘を鳴らす歴史の証人となっている。
もう一つは、宮島の厳島神社である。海上に浮かび、背後の原始林と溶け合う厳島神社は、平安時代の神殿造りで、その独自性によって高い評価を受け、1996年に世界遺産に登録された。登録地域は、厳島神社の建築群と弥山の原始林で、中心部分の総面積は約4.3平方キロメートルである。厳島神社は推古元年(593年)に創建され、仁安3年(1168年)に平安末期の武将、平清盛が平安時代の貴族の邸宅の建築様式である神殿造りを採用してから、現在の姿となった。
鹿児島県南部の屋久島は、平地から山頂までの間に、亜熱帯植物から亜寒帯植物に至る植生が連続的に垂直分布していることと、1000年以上の樹齢を持つ杉の木による美しい景観が高い評価を受け、1993年に登録された。屋久島の面積の90%は森林で、もともと神木として崇められている屋久杉を保護するために、屋久島の原生林は1924年に天然記念物に指定され、1954年には特別天然記念物となり、1964年には国立公園に指定されたが、大規模な伐採は続けられた。1971年に「屋久島を守る会」が結成され、1980年代には伐採が全面的に禁止された。
琉球王国のグスクおよび関連遺跡群は、かつては東南アジア、中国、朝鮮半島、および日本の政治、経済、交流の中心だった場所であること、もはや存在しない琉球王国の遺跡と次第に忘れられていく伝統文化を現代に伝えていること、そして、沖縄の伝統である自然崇拝と祖先崇拝の信仰形態が今まで保存されてきているという3つの面から評価を受け、2000年に世界遺産に登録された。登録されているのは、城跡を中心に、玉陵、石門、斎場御嶽など9つの遺産である。グスクの城壁は富のシンボルであり、その形は日本本土の方形のものとは異なっており、地形に沿って作られた美しい曲線が特徴的である。(南天執筆)