6月13日、小惑星探査機「はやぶさ」が地球に戻る姿を見るパブリックビューイングのために、1500人がJAXA(宇宙研究開発機構)相模原に集結した。参加者たちが注目する中、運用管理室内では「はやぶさ」の帰還のために、最後の作業が着々と進められていた。「はやぶさ」が地球の水平線上に消えた。最後の交信時刻は22時28分だった。「はやぶさ」の運用管理が終了し、室内では、長きに渡って操作に協力してきたNECネットワークのスタッフに対して、JAXAのスタッフから花束が贈られた。この感動的な情景に、観客の拍手は1分以上も続いた。
「はやぶさ」が地球を出発してから任務が終了したこの日まで、2600日近い日数が経過した。2003年5月9日にM−Vロケットで打ち上げられ、2005年9月12日、約20億キロの旅を経て小惑星イトカワに到着し、同年11月に2回のタッチダウンとサンプル採取を試みた。だが往復の路程で、「はやぶさ」は多くの試練を経験した。2005年7月と10月には、リアクションホイール3台のうちの2台が相継いで故障。復路では化学エンジンの燃料が漏れてガス化した燃料が宇宙空間に噴出し、温度が低下してバッテリーが放電、「はやぶさ」は地球との連絡を絶った。
7週間後、運用チームの必死の努力の結果、「はやぶさ」との交信が奇跡的に回復。化学エンジンを失った探査機は、太陽光圧を利用した新しい制御方法によって地球への帰還が可能になった。だが、一難去ってまた一難。絶体絶命の危機を脱したと思われた「はやぶさ」は、さらに大きな困難に見舞われた。2009年11月4日、ABCDの4つのイオンエンジンとスラスタのうち、唯一使用可能だったDのイオン中和器が寿命に達し、「はやぶさ」は飛ぶための翼を失ってしまったのである。
地上のスタッフは、先に中和器が故障したスラスタBのイオン源とスラスタAの中和器を接続して、1台のエンジンとして復活させた。満身創痍の「はやぶさ」が13日に地球に戻ってくるまでには、7年間の長い月日が流れていた。この苦難に満ちた宇宙の旅は、我々に宇宙に関するどんな情報を伝えてくれるのだろうか。「はやぶさ」の研究成果の発表に大いに期待したい。(ff執筆)