本来、会社員は責任を持って自分の仕事をしっかりやっていれば何も問題はないはずだ。だが日本型の組織では、事はそう簡単ではない。会社の理念に共鳴して精神的にも会社と一体にならなければ、高いモチベーションを持って仕事に取り組むことはできない。これは日本の大多数の会社の現状である。そこで会社員と、会社の理念や目標を代表する社長との距離が重要になってくる。この見ることも触ることも不可能な距離を、実際のキロ数で計算するというユーモアたっぷりのアンケート調査が行われた。さて、その結果は?
20%の人が、社長と社員の距離を4億キロと回答。これは地球と火星の距離(最も遠く離れている時)に相当する。このことから、「社長は雲の上の存在であるだけでなく、まるで宇宙人だ」と思っている人が少なくないことがわかる。その他、以下のような結果が出た。
1.社長との距離が遠いと感じる主な理由は、直接の接触がないこと。
2.直属の上司との距離が5メートル以内と感じる人は半数以上。上司との距離を感じるのは、上司が仕事や周囲の状況を理解していないから。
3.会社との距離は、正社員の半数が遠いと感じている。
4.会社との距離が4億キロ以上とした人の40%が、会社の業績が悪化していると答え、67%が、自分のモチベーションが低いとした。
社員と会社の距離を改善するには、おそらく次のような点から行うべきであろう。
1.社長と社員が直接接触する機会を作る。例えば、会社が行うイベントなどに参加することによって、社員と交流し、社員のモチベーションを高めて会社の業績改善につなげる。
2.社員に会社の理念を認識させて、共感が生まれるようにする。社長が情報を発信し、会社内部の交流を活性化させ、会社の理念を徹底させ、戦略方針を浸透させることが必要不可欠である。
3.会社との距離に比べると、上司は比較的近い存在であるが、社員の仕事に対する理解の不足や、目標や価値観の違いなどによって生じる上司との距離も、縮めていく必要がある。
今回の調査を行ったJTBモチベーションズは、JTBの社内ベンチャー第1号として創業した会社である。JTBが行っている「報奨旅行」(優秀な業績を上げた社員に旅行をプレゼントする)の業務に対する疑問を最初の着眼点とし、現在は社員のモチベーションを高めるためのコンサルティング事業を行っている。JTBモチベーションズでは、表彰式の企画など企業内部のイベントだけでなく、調査研究も主要な業務内容となっている。(緋梨執筆)