時代が進歩するのにつれて生活形態も変化し、子どもたちを取り巻く社会問題もますます増えている。少子化問題より深刻なのは、「劣子化」問題である。学習能力の減退、生活能力の低下、道徳意識の崩壊など、日本社会の未来を支える重責を担う子どもたちの間には、社会と家庭と学校が共に考えて解決すべき問題が確かに存在する。「なぜ現代の小学生は、最も基本的な生活常識さえないのだろう?」と、年配者は、みな子どもたちの現状を案じているようだ。
十文字学園女子大学の児童幼児教育学科教授で、元御茶ノ水女子大学附属小学校副校長の流田直先生が執筆し、小学館から出版された「楽しく遊ぶ学ぶ/せいかつの図鑑」は、まさに現代の子どもたちに欠けている生活の基本常識に焦点を当て、絵と写真で具体的に教える図鑑である。蝶結びの結び方、卵の割り方、掃除のやり方など、家庭や学校の日常生活で触れる機会があるはずのことを、現代の子どもたちはなかなかうまくできない。この図鑑は、衣食住に関することにテーマを絞り、子どもたちが興味を持って体験して、うまくいった時に楽しさを感じられるように構成されている。
本書で述べられているのは、部屋を片付けたり、服をたたんだり、食事を作ったりといった生活常識であり、目的は、生活能力を養うことによって子どもたちの計画能力を高め、最終的には学習能力を高めることにある。日常の家事によって家族や友達、先生との交流を深め、幼い頃から一生の間に必要な生活能力を養おうということなのだ。そのことは、1.着る(洗濯物をたたむ、ちょう結びなど)2.食べる(食卓での礼儀、季節の食べ物など)3.生活する(掃除、節約など)といった目次を見れば、一目瞭然である。
「楽しく遊ぶ学ぶ/せいかつの図鑑」は、小学館児童図鑑プレNEOシリーズの一冊である。このシリーズの「楽しく遊ぶ学ぶ/かず・かたちの図鑑」「楽しく遊ぶ学ぶ/こくごの図鑑」と合わせて、小学校の3大教科である国語、算数、生活に対応して編集されている。簡単に見えることであっても、親であっても全てを完璧に出来るわけではない。子どもたちにどのように教えるべきか迷うこともあるだろう。このような生活図鑑があれば、子を持つ親として改めて様々なことを学び直すことができるであろう。(南風執筆)