オフィスにお菓子やアイスクリームの入ったボックスを置き、商品と引き換えに代金を入れる「置き菓子」がひそかなブームになっている。最初に「置き菓子」を始めた「オフィスグリコ(江崎グリコ)」を筆頭に、「オアシスボックス(ロッテ)」、「ちょこたべBOX(千趣会)」など、お菓子メーカーに限らず様々な業種が参戦しており、「置き菓子」界は戦国時代を迎えたようだ。
「置き菓子」は、「お菓子を食べる場所の約2割がオフィス」というデータを元に、オフィスグリコが2002年に開始した。現在、オフィスグリコだけで9万8千台、年間売上30億円というビジネスに成長した。
このサービス、意外なことに利用者の7割が男性だ。支持される理由は、そこにあるという「気軽さ」。「コンビニでちょっとだけお菓子を買うのは恥ずかしい」「わざわざ会社を抜け出して買いに行くのは面倒」という心理をついたのだろう。「集中したい時はガム、人と会う前には口臭を抑えるタブレット、と目的別に使う」という男性もいるようだ。「お菓子=子供または女性」という概念は「置き菓子」界では通用しない。
またこのような無人販売のシステムは、きちんと料金を回収できているのか、という心配もあるだろうが、代金回収率は95%だという。未払いの5%の理由は、購入時に小銭がなく後から払うつもりだった…という単なる入れ忘れ。人は意外と真面目なのだと感心する数値だ。また最近はお菓子だけでなく、インスタントラーメンなどの軽食や、プリンやヨーグルト、飲み物まで置いている会社もあるという。料金も、100円、150円、200円とワンパターンではない。近くにコンビニがない、残業が多いという職場にはうってつけのサービスだ。一見、昔なつかしい無人販売のようなこのサービスだが、その奥には現在のビジネス全般に通じる発想が隠されているのではないだろうか。人件費をかけずに新たなニーズを見出していく。その辺をもっと突き詰めていくのも面白いかも知れない。(亜遊民執筆)