ゴールデンウィークの最後の2日間、山手線の五反田駅付近にある東京デザインセンターで、まったく新しいタイプの大学生によるデザイン展が行われ、多くの来場者を惹きつけていた。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科のXD(エクス・デザイン)プログラム所属研究室が開催した「XD展」は、現代の大学生たちの創意と思索の結晶を合同で発表する展覧会である。
現代のデザインは、これまでの様々な分野におけるデザインの垣根を打ち破る必要があり、広い視野を持つことと総合的なデザインを行うことが求められている。日々複雑化するデザインを理解した上で新しい価値を創造することが、現在最も大きな課題になっているのだ。今回の展示は、音楽、映像、プロダクト、メディアアート、ロボットなどの様々な分野で研究を行う教員たちが学生を指導し、分野の境界を乗り越え、互いに影響を与えながら、研究開発を行ってきた成果である。
日本の第一線で活躍するコンセプターの坂井直樹さんは、これまでに日産自動車の「Be−1」、「パオ」などの人気商品を手がけ、コンセプトを革新し、時代をリードしてきた。またauの携帯電話では、外部デザインとコンセプトを担当した。これまでに出版した「デザインのたくらみ」と「デザインの深読み」はベストセラーになっている。今回彼の指導する学生たちが展示する未来の杖は、先端的なコンピュータセンシング技術を利用し、盲導犬に代わって高齢化社会の福祉に役立つものとなっている。国際的にも評価が高いインダストリアルデザイナーの山中俊治さんは、工業デザインとアートを巧みに融合し、Suicaの自動改札機やウィルコムのW−SIMの応用を実現した開発者の一人である。これまでに毎日デザイン賞、iFグッドデザイン賞、Gマーク金賞など多くの賞を獲得している。学生たちが彼の指導の下にデザインした「Spacecraft Design Project」は、独特な造形で宇宙船の未来を描いている。1979年生まれの筧康明さんは、若くしてデザイン分野で多くの成果を挙げている。彼の研究方向は、実世界指向情報環境、インタラクティブメディアおよびメディアアートである。今回彼が指導した学生たちが展示した「onNote」「Metamorphic Light」「rainterior」などの斬新な作品は、光の効果と現実生活を緊密に結合して、不思議でありながら、人間味のある空間を創り出している。
「XD展」は2009年3月に第1回が行われて以来、今年で3回目になる。今回は「合流」をテーマとし、学生たちの研究成果が一堂に集められ、第一線で活躍するクリエーターたちの対談も行われた。開放的な思考や趣きある言葉が溢れた対談には、しばしば拍手が沸き起こり、来場者に対して未来に向けたデザインの真髄が提示された。(ff執筆)