中央文壇を離れ、故郷の静岡県藤枝市に帰って人生の最期まで過ごした作家、小川国夫は、その独特の世界観によって「孤高の作家」と呼ばれてきた。そして最後の長編小説「弱い神」が、今年発表され、大きな話題を呼んでいる。「内向の世代」を代表する小川国夫の原作は、藤枝出身の演出家である仲田恭子によって、何度が舞台化の試みが行われてきた。その仲田恭子自らがプロデュースを務めた初の映像化作品が公開される。注目を集めているこの作品は、「デルタ小川国夫原作オムニバス」である。この映画は、藤枝市周辺地区に根ざした郷土演劇祭「志太お茶の香演劇祭」をきっかけとして誕生した。
この作品は三つの短編から成り、監督は3人の新進気鋭の映像作家が担当している。「他界」の監督は、映像制作集団「空族」の高野貴子で、彼女は富田克也監督の「雲の上」「国道20号線」などで撮影を担当している。PFFアワードに入選し、水戸短編映像祭で準グランプリを受賞した小沢和史が「ハシッシ・ギャング」の監督である。「誘惑として」の監督は与那覇政之で、彼は「USB」「美代子阿佐ヶ谷気分」で撮影を担当している。この3人の監督たちは小川国夫の映像化に興味を持ってきた。幻想的な情景、鮮やかな描写など、小川国夫作品の視点が映像でどのように表現されるのだろうか?大いに期待したいところだ。
特に注目したいのは、これまで制作に参加した映画が7本あり、多くがカメラマンとしての参加だった与那覇政之が、今回「デルタ小川国夫原作オムニバス」では初めて監督を務めるということである。桃井かおりが出演し、去年上映された「USB」によって、彼は映画界で次第に注目されるようになっている。彼の世界観が小川国夫の世界観とどのように融合して昇華するのかが、小川ファンの人々が興味を感じる部分であろう。この作品は、渋谷のアップリンクXで7月24日から一般公開される。アップリンクと、下北沢の「天狗ゼリー!サムライアイスクリーム!」で、割引の特別鑑賞券を販売している。(moonlight執筆)