ラジオのパーソナリティやテレビの司会として活躍している吉田照美さんが、東京・渋谷のBunkamuraギャラリーで油彩画の個展を開催した。吉田さんは早稲田大学卒業後、ラジオ放送局である文化放送にアナウンサーとして入社。「大相撲熱戦十番」「セイ!ヤング」「てるてるワイド」などを担当し、街頭で突然一般人を驚かせるようなパフォーマンスを行なうなど、今まで誰も試みなかった伝説的企画を数々生み出し、若者を中心に絶大な人気を博した。フリーに転向した後は、テレビの司会や映画俳優、歌手などにも挑戦し、現在も「吉田照美 ソコダイジナトコ」のパーソナリティや絵本の出版など、多彩な活躍を見せている。
吉田さんが油彩を始めたのは5年程前。幼い頃から図工や美術が好きで、50歳の時にこれからは好きなことをもっとやっていこうと一念発起、独学で色鉛筆画や水彩画を試みたが、なかなか自分の表現は見つからなかった。そんな時に歌手であり画家でもある八代亜紀さんに勧められ、油彩を始めたという。現在は自宅近くのアトリエに足繁く通い、作品を日々創作しているそうだ。「何度でも上から塗り直すことができ、失敗がないのが性に合う」と、吉田さんは油彩画の魅力を語る。
今回の個展のテーマは「不思議な夢」で、ダリやマグリットなどシュルレアリスム、またピカソなどキュビズムの影響を受けつつ、独特のシニカルな雰囲気が漂う作品など約70点が展示されていた。主なモチーフは、幼い頃の父親との思い出であるバルサ飛行機や、自分が苦しいときに必ず現れ、幸運をもたらしてくれるというハチドリなど。どれも吉田さんの幼い頃の夢や憧れを想像させるものや、思わぬ組み合わせで観るものをその独特の世界に引き込んでしまう作品ばかりだ。油彩画の他にも、本人と見間違えるほど精巧に作られた吉田さんのシリコン製等身大人形が訪れた人々を出迎え、人気を集めていた。(林愛香執筆)