和服を着こなし、いつも温かく優雅な微笑を浮かべている、日本のテレビドラマでよく見かけるような典型的な日本の伝統的女性…、それが水野さんの第一印象だった。彼女と一緒にいると、大人も子どもも、彼女の親しみやすい魅力の影響で思わずにっこりと微笑んでしまう。
武蔵野美術大学の油絵科で学んだ水野ぷりんさんは、卒業してから、美術専攻の学生にとって非常に魅力的な広告代理店で働いていた。しかし才能溢れる彼女は現状に満足できず、自分の能力をさらに発揮していくため、イラストレーターとして独立した。水野さんが関わる分野は非常に広く、書籍、挿絵、さらに近年は映像、民話のアニメーション、絵画コンクールの審査員などを行なっている。出版された主な書籍には、「きんいろのライオン」「かさじぞう」「むらをすくったおに」「ハートボイス」などがあり、近日中に小川未明児童文学賞大賞作品「アンモナイトの森で」や、日本の昔話を元にしたコミカルで心温まる絵本「おならのお嫁さん」が発売される予定だ。また映像作品には、DVD「映像で綴る日本の詩歌 中原中也」「平和絵本」などがある。東京中央区にある平和祈念バーチャルミュージアムでも、彼女の作品を見ることができる。
典型的な良妻賢母のように見える水野さんを、彼女の作り出す作品と結びつけるのは難しいかもしれない。画家としての彼女は、日本の古典文学、怪談、能などをテーマとした作品を発表して、各界の注目を集めている。古典や能の世界観を表現した作品は、多くの画家にとって近づきにくいジャンルだが、水野さんが独自の視点で描いた作品には、現代人の心にも通じる普遍的な内容が描かれている上、古典的な作品の中に新しい時代のエッセンスが加えられている。例えば水野さんの民話に頻繁に登場する、鬼をテーマとした作品では、鬼の恐ろしさをまざまざと描きながら、人間のような感情を鬼に与えることで、私たちをその恐ろしい鬼に共感せずにはいられない気持ちにさせる。
また、現在特に水野さんのアニメーション作品は国内のみならず、世界中から注目を集めている。日本の伝統を現代的にアレンジした水野さんの作風は、これまで大多数を占めてきた、ポップで近未来的な日本のアニメーションとは一線を画すものとして、海外のアーティストなどからも非常に高い評価を受けている。そんな水野ぷりんさんから今後もますます目が離せない。(緋梨執筆)