日本のアニメ史上に新しい時代を開いた画期的な作品と言えば、その中に「新世紀エヴァンゲリオン」(通称エヴァ)を含むことに誰も異存はないだろう。華麗な戦闘場面の下に展開する圧倒的な情報量を含む物語、延々と続く記号化された精神分析、意識の流れによるモンタージュの編集法、そして大量の哲学的イメージの描写が、このアニメをポストモダンのスタイルを切り開く代表作にし、さらには21世紀のハリウッド映画の物語スタイルにも影響を与えているのだ。日本の80年代の普遍的意識構造を代表する碇シンジ、無口で無感情で無表情な少女綾波レイ、強がってはいるが心は弱いアスカなども、誰もが知っている典型的なイメージとなっている。
だが「新世紀エヴァンゲリオン」は、一つの作品として文化史に加えられるだけではない。日本の基幹産業であるマンガ・アニメのフラッグシップとして、日本のアニメ史上最も多くの収益を上げた作品という、もう一つの画期的な記録を打ち立てているのだ。1995年の最初の放映から現在までに、「新世紀エヴァンゲリオン」が送り出した製品の豊富さと価格の高さは、想像を絶するほどである。2007年に、映画製作を行ったGAINAXが、その製品の売り上げ総額が1500億円を超えたと発表したが、それからさらに5年が過ぎ、新しい映画版も「序」「破」「Q」が次々に上映され、マンガ版が最終的に完結した今、この数字はどのぐらいに膨れ上がったことだろうか?
「新世紀エヴァンゲリオンQ」が上映された今年、GAINAXのプロモーション活動は最高潮に達した。秋葉原のクレーンゲーム機の中や、渋谷109のジーンズ、ハローキティのバッグ、あるいはアートデザイン展など、エヴァの要素はあらゆるところで見ることができた。中でも最も面白かったのは、GAINAXと全日空(ANA)がコラボして、羽田国際空港で行ったハイテク体験イベントである。今年の6月、Androidのスマートフォンでアプリケーションをダウンロードして、カメラを空港の滑走路に向けると、何もなかったはずの滑走路の上にエヴァ初号機の堂々としたロボットが現れたのだ。このイベントは大きな反響があったので、10月末から来年の1月14日まで、羽田空港にはエヴァのロボットが再び登場することになった。今回は初号機だけでなく、真っ赤な二号機も登場し、飛行機と共にロボットが降りてくる画像も加わった。羽田空港を利用する時は、スマートフォンを取り出して体験するのをお忘れなく。(松鼠執筆)