日本の自動販売機は独自の進化を遂げていることで有名だが、JR東日本ウォータービジネスが、最新のテクノロジーを搭載した次世代自動販売機を開発し、8月10日から東京・品川駅に設置された。一見シンプルに見えるこの自動販売機、だが実は驚くべき機能を備えているのだ。
ポイントは三つ。一つ目は、47インチの大型ディスプレイとデザイン。タッチパネル方式が採用され、スイカやモバイル用Felicaリーダ/ライタにも対応しているので、より簡単で迅速な操作が可能になった。デザインはインダストリアルデザイナーの柴田文江氏。柴田氏は、京都の新感覚カプセルホテル「9 hours」や「無印良品 体にフィットするソファー」などのデザインを手がけており、今回もこれまでの自販機にはない洗練されたデザインを生み出した。女性が膝を曲げないでも取り出せる高さに取出口を設定するなど、細かい点にまで配慮がなされているのも特徴だ。
二つめのポイントは、高度なマーケティング頭脳。この自販機の前に立つと、内部に埋め込まれたセンサが顧客の性別と年代を推測し、おすすめ商品を紹介してくれる。これは購買意欲促進のためだけでなく、マーケティングのデータとしても使われ、新規商品開発などに役立てていくという。ただし映像データは、個人情報を配慮して保存されない仕組みになっている。さらに季節、時間帯、環境に応じた商品訴求を行い、顧客の需要を喚起していくという。
三つ目のポイントは、デジタルサイネージ・ネットワーク。WiMAXネットワークを使って絶えず新鮮なコンテンツを配信できるので、新たなメディアとしても注目されている。また災害発生時には、災害支援ベンダーとして、遠隔操作により飲料を即時に無料提供する仕組みも用意されている。
この多機能を備えた革新的な自販機は、今後首都圏の主要駅内で展開を始め、2年を目処に約500台が設置される予定だ。今後はコンテンツや限定商品にも話題が集まりそうだ。(林愛香執筆)