ジェームズ・ダイソン氏は、どうやら珍しくて不思議な電気製品の発明にかなりの興味を持っているようだ。空気を圧縮したり出したりする原理から発明された革命的な掃除機やドライヤーは、設計が実に巧妙にできている。ダイソン社の製品は、最近では全世界に知れ渡っているが、紙パックのいらないサイクロン型掃除機の技術は、実は1947年という早い時期にダイソン氏が開発していたものだ。
酷暑の夏に、家やオフィスに直径30センチ程のブルーの金属リングが置いてあったら、視覚的にいくらか涼しい気分を与えてくれるかもしれない。おそらく既存の概念では、これがダイソンから今年発売された新しいスタイルの扇風機であるとは思い至らないだろう。新奇な外観だが、果たして十分な風が来るのだろうか?―実は、この扇風機には外観からは思いもよらないような実力があり、さらにつけていても非常に静かなのである。
羽根のない扇風機は、人々の常識を覆した。羽根がなくても風を送ることができるのは、ダイソン社が開発したドライヤーから発想を得たものである。ドライヤーは吸い込んだ空気の何十倍もの空気を送り出すことができる。この原理を利用して羽根のない扇風機を発明するのは、ダイソン氏にとって難しいことではなかった。羽根の代わりをするのは金属リングである。ここから風が発生する原理は、飛行機が飛ぶ原理と同じだ。普通の羽根のある扇風機と異なって、この扇風機のモーターは土台部分にあり、重心が低いので倒れにくい。羽根がないので掃除も簡単だし、子どもが指を挟まれる心配もない。一般の扇風機と同じなのは、左右に首を振ったり、上下に角度を調節したりするのが可能な点だ。
カカクコムの統計によれば、梅雨の時期からずっと蒸し暑い日々が続いた今年の夏のエアコン販売量は意外に少なく、それに比べて扇風機やサーキュレータの人気が高いそうだ。この現象は、おそらく長期的な経済不況や人々の環境意識の高まりと密接な関係があるだろう。2009年の夏と同じく、今年の夏のエアコンもエコポイントの対象製品になっているが、このことはエアコン市場の販売の原動力にはあまりなっていない。エアコンの更新サイクルは10年ほどである。経済不況の影響で、高額のエアコンを避け、低価格帯の扇風機やサーキュレータで、既にあるエアコンのパワー不足を補うというのが、賢明な選択なのかもしれない。エアコンと違って、扇風機はつけっぱなしで寝ても風邪を引かない。これが、扇風機がよく売れているもう一つの理由かもしれない。(南風執筆)