近頃、「アバター」を初めとして、多くの映像企業が先を争うように3D映像の映画やテレビ番組やゲームなどを売り出しているが、実は3Dはそれほど目新しいものではない。その歴史は、1840年のチャールズ・ホイートストン卿の時代にさかのぼる。18世紀から、3D映像製作の基本原理はほとんど変化していないのである。
人間の二つの目はそれぞれ、焦点を合わせたり、物の大きさや重量感や明晰度や移動速度などを把握したりする働きがあるが、大脳は、両方の目が物を識別した時の異なる情報や目の動きの情報などを総合的に用いて、空間的に物体を認識する。実際の立体を見るとき、二つの目の位置は異なるので、それぞれの目が異なる物体として見ている。大脳は二つの異なる画像によって立体を再構築するのである。つまり、平面的な画像であっても、二つの目による視覚の差があるために、大脳はそれを立体として認識できるというわけだ。
沖縄在住のアメリカ人、Rob Oechsle(ロブ・オーシュリ)さんが、写真共有サイトのFlickr(フリッカー)に保管した膨大な数の写真の中に、明治初期に江南信國が撮影した写真を集めた「OLD JAPAN in 3−D」がある。これらの写真を鑑賞する時は、まず目をちょっと休ませてから、遠くの方を眺めるような感じでぼんやりと視線を絵の間に合わせる。焦点が定まると、平面的な図案が立体化し、当時の風景画や人物画が立体的に目の前に再現される。
この方法で立体画像が見られない場合は、GIFを使って製作された立体画像を見てみよう。視覚の差を利用して作られた画像はたくさんあるが、中でも以下のサイトをオススメしたい。立体画像を擬似化したものだが、これを見ると写真の場面に実際にいるような感覚を味わえるに違いない。画像が見にくい場合は、それぞれの写真をクリックして一枚ずつ表示することもできる。さあ、パソコン画面を通して、明治時代の旅をしてみよう。(河上晃一郎提供)