地方交通の新たな手段として、新型の軌道電車LRT(次世代型路面電車)が日本全国で注目を浴びている。大阪の府市統合本部の実用構想が報道され、徳島、高知の両県では新型車両DMV(デュアル・モード・ビークル)を実用化するために、さらなる努力が重ねられている。DMVはJR北海道が2004年に開発した新型車両であり、道路上ではバスだが、線路の上では鉄製車輪を使って走行する。前部の突起した「ノーズ」の部分に線路用の車輪が格納されている。80年前からイギリスやドイツなどでDMV車の開発が試みられたが、実用化には至らず、JR北海道が開発に成功した後は、兵庫県の三木鉄道(すでに解散)でDMV導入の問題が検討されて一時的に話題になったが、路線が廃止されたため使用されることはなかった。
利用率が低迷を続けている四国東南部の徳島と高知では、公共交通活性化のために、JR北海道から車両を借用して徳島の海陽町で人を乗せた走行実験を行った。こうした実験は北海道以外では全国で五例目で、試乗モニターの定員126人に対して全国から556人の応募があった。車内中央には細い通路が伸び、両側には2人がけと1人がけの椅子がある。定員は29人である。道路上では法定時速で、JRでは時速60キロ、阿佐海岸鉄道では時速65キロで走行した。実験路線は宍喰駅から出発し、一般道路をJR牟岐駅まで走り、さらに牟岐駅からJR、阿佐海岸鉄道を宍喰車庫まで走り、再び道路に戻って高知県東洋町の観光施設「海の駅」に行き、最後に出発地の宍喰駅に戻った。道路では、状態が悪かったせいかかなり揺れた。実際に導入することができれば、正に世界初のDMVということになる。
深刻な少子高齢化と地方の過疎問題をかかえた日本では、地方の公共交通の運行はますます難しくなっており、バスと鉄道の競争で共倒れにもなりかねない。もしバスが線路を利用できれば、設備投資が少なくて済み、登下校、病院通い、買物、観光などが便利になる。運行の途中におけるバスの運転手と鉄道の運転手の交代や、駅のホームが現在はDMVに対応できないことなど、解決を必要とする問題は少なくないが、DMVは既存の電車の運行に比べて四分の三もコストを削減できる。近未来の交通手段として、実際に導入される日はそう遠くないだろう。(緋梨執筆)