中島敦の山月記
夏目漱石の「こころ」と並んで、高校の現代文の教科書の人気教材であるという中島敦原作の「山月記」。この名作を野村萬斎による構成・演出・出演の演劇『敦 −山月記・名人伝−』として世田谷パブリックシアターで9月1日から18日に上演されることになった。当プログラムは去年9月の公演の再演。
狂言師の野村萬斎は日本伝統芸能と現代劇との融合を目指して狂言のほかに、2002年から世田谷パブリックシアターの芸術監督として様々な舞台芸術活動を精力的に行っている。能・狂言・歌舞伎などの伝統芸能と、新劇・小劇場などの現代演劇のボーダーを越えた芸術を志向する。
確かに、原作は中国清朝の説話集『唐人説薈』中の「人虎伝」という古典の翻案であるし、幻想的な背景、化け物(現実のものではないという意味で)が主人公という表現方法は、能に脚色したら面白い題材だと思う。能を悲劇、狂言を喜劇と線引きするのは無意味だと主張する野村にはあつらえ向きの主題で、ひょっとするとこの劇は彼のライフワークになるのかもしれない。主人公李徴の悲痛な叫び、人間の自我、自意識の探求は、日本人の心の琴線に触れる永遠のテーマと言えるのではないだろうか。 (Nyanya執筆) |