少女漫画と能の間に―創作能「ガラスの仮面」―
中央にしつらえられた作り物(据え道具)は、梅ノ木に見立てて薄茶の布で囲った山のみ。その上にルビーのように光る梅の花が枝垂れている。舞台後ろは一面のスクリーンで、綾模様のモチーフが深いブルーの中に浮かび上がっていた。5月15、16日、ル・テアトル銀座の現代演劇用のシンプルな舞台で、新作能「ガラスの仮面」が演じられた。
静まった舞台に一人登場し、「ガラスの仮面」の物語を語るのは、月影千草役の宝塚歌劇団の邦なつき。その後、西の者と東の者による環境破壊を題材にした狂言が演じられ、さらに仏師が登場して阿古夜(紅天女)との恋物語が演じられる。
1976年からなんと30年も連載している「ガラスの仮面」はまだ完結しておらず、劇中劇の「阿古夜(紅天女)と仏師の一真の物語」はまだ漫画の中では描かれていない。能のほうが原作より早くリリースした、というわけである。「ガラスの仮面」は登場人物も多く、シテとワキだけの能でどのように表現するのか不思議に思っていたが、演出によってさらりと処理されていた。要するに、導入部の月影千草の語りで全体のストーリーが、縦軸の能と地謡で「自然(神性)と人間の愛と掟」が、紡がれていくのだった。横軸として「地球と人間の共存」が狂言として付け加えられていた。
梅若六郎の紅天女は完成された美しさを見せ、福王和幸の清々しい美男子ぶりはため息を誘った。脚本は宝塚歌劇団特別顧問の植田紳爾、「ベルサイユのばら」を宝塚歌劇にした演出家である。これで謎は解けた。漫画と能の間には、宝塚があったのだ。納得の舞台である。 (Nyanya執筆) |