日中演劇交流 ― 鵜山仁と過士行の場合
東京・初台の新国立劇場で4月1日から13日まで「カエル」が上演された。中国現代演劇を代表する劇作家、過士行の新作を、鵜山仁が演出。鵜山仁氏は、文学座に所属し、芸術選奨文部大臣新人賞、千田是也賞、紀伊国屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞最優秀演出家賞並びに大賞などを受賞した今の日本演劇界を代表する演出家の一人。去年の秋、紀伊国屋サザンシアターで上演された「朱鷺雄の城」でも好評を博した。
「カエル」は、海辺の理髪店で、理髪師と客が議論し、旅人が傍らで待っており、女が田植えを始めるうちに海面が上昇してきて店が水没する、というあらすじ。サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を思い起こさせるような不条理劇を、中国の劇作家が書いたというのが興味をひいた。ベケットなどフランス不条理演劇の流行は日本では70年代だったが、中国では80年代に流行り始めたとのこと。何も出来事が起こらないまま世界の終焉を暗示させるという終末観と、理髪師たちの話題に上る一茶の俳句という取り合わせがいかにも魅力的だった。この脚本を過士行氏に頼むに当たって、制作側から「アメリカの9.11事件と、インド洋の津波を思い起こさせるような事件を入れること、登場人物は6人以内」など、細かな注文があったそうだ。また、舞台では、オーストラリアのペット用カエルが8匹登場していて、それが大変高価なカエルだったという。舞台を実際に見た人は、「カエルは居たのはわかったが、どんなカエルか良く見えなかった。」というから、演出はなかなか難しかったようだ。中国でも上演される可能性はあるが、年内すぐにというわけではなさそうだ。
すでに鵜山氏は来年9月から新国立劇場4代目の芸術監督に就任することが決まっている。今回のような外国の原作を演出するような演劇の国際交流にこれまで以上に力を入れたいという。今から大変楽しみである。 (Nyanya執筆) |