伝統の継承と新しさの創造
ワールドカップサッカーの準備は、ドイツ各地で着々と進められており、そのPR活動も人々の注目の的となっている。 FIFA では、ワールドカップの公式ポスターを作るために世界各国から14名のデザイナーを選出した。この「Official Art Poster 2006 FIFA World Cup Germany」と呼ばれるデザイン活動で、唯一の日本人デザイナーが描いている、金箔の地に重々しい甲冑をつけてサッカーボールを蹴る武士のイメージが、その独特な味わいで評判を呼んでいる。そのデザイナーとは、今年2月に40歳になる東京生まれのアーティスト、天明屋尚(てんみょうや・ひさし)である。
天明屋尚は幼い頃から独学で狩野派、琳派、浮世絵など、日本の伝統絵画から絵画形式を学び取った、現代的なアクリル画を用いてその形式を継承、現代風俗や社会風刺などをデジタル描画で表現し、その繊細さと大胆さで斬新な画風を創り出している。室町時代の「婆娑羅(ばさら)」や江戸時代の「かぶき者」、さらに平成時代の「反権威」が、その作品の精神的本質を構成している。彼は、芸術は破壊であり創造であると言いきり、芸術の「武闘派」の旗を公然と掲げている。鑑賞する者を彼の作品は美しい幻想の世界に引き込んでいく。
天明屋尚の作品は、日本のデザイン芸術賞や岡本太郎記念現代芸術賞を獲得したほか、近年は海外からの注目も集めている。彼の作品は、ロボット、いれずみ、コンピュータゲーム、魑魅魍魎(ちみもうりょう)などを一つに融合して人々の心を動かし、影響を与え、それによって日本の外へ、世界の中へと発展していこうとしている。
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