魂を癒すブルー・ドッグ
東京にいて、毎年二、三回ここを訪れるのが長年の習慣になってしまった。ブルーの外装の店舗、いつも同じ表情のブルー・ドッグ、それが見えてくると自然に心が揺れ動きはじめる……。
高級なファッションブティックが立ち並ぶ東京は青山の骨董通り。そこに現代感覚溢れる「The Blue Dog Gallery」がある。ここに並べられた作品はすべて、アメリカの著名な画家GEORGE
RODRIGUE(ジョージ・ロドリーゲ)が、死んでしまった小さな愛犬TIFFANY(ティファニー)を偲んで創作したものである。
GEORGE RODRIGUEはアメリカでたいへん有名で、その作品は非常に人気があり、現代のアメリカ人の生活を描いていることから、大統領や州知事までが自分の肖像画を依頼しているほどだ。愛犬を失った悲しみで彼が一度は絵を描くことをやめてしまった。しかしある静かな夜、彼は夢の中で青い月の光を浴びて青く輝くTIFFANYを見た。そして1989年にブルー・ドッグシリーズを描きはじめたのだ。最初の作品は黒い森などをバックにしたものが多かったが、次第に溢れる太陽の光や鮮やかな模様が作品の主旋律になってきて、とうとうバイクに乗った楽しそうなブルー・ドッグまで現れ、犬の表情も悲しげなものから温かいものに変化してきた。
ブルー・ドッグの作品を展示販売する店舗は全世界で三つだけである。二つはアメリカにあり、一つが日本にある。東京の青山にある「The
Blue Dog Gallery」は今年で満10年を迎え、10月にはGEORGE RODRIGUE自らが青山を訪れて、店内で作画する予定である。
一心に見つめるブルー・ドッグの二つの瞳に出遭うと、我々はそばに寄って彼女に向かい合わずにはいられなくなる。芸術の力は国境を越え、一人のアメリカ人芸術家の愛犬に対する思いと再生の物語は、これらのブルー・ドッグのすばらしい作品を通して日本に、そしてあなたに伝えられるのである。
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