夢の大田原牛
日本料理が好きな人なら、「松坂牛」や「米沢牛」はきっと聞いたことがあるだろう。でも、「大田原牛」を知っている人はまだ少ないはずだ。これは今日本で最も人気のある牛肉なのである。大田原牛を食べることができる東京の麻布十番の「大田原 牛超」には、ボーナスが出たときや特別の記念日に20〜30代の若者が殺到する。まもなくホワイトデー(3月14日)がやってくるが、バレンタインデーのお返しをするために「牛超」に予約を入れる男性も多いことだろう。
ところで、大田原牛というのは「松坂牛」や「米沢牛」のように産地のブランドというわけではない。大田原牛の条件はたった二つである。一つは「日本食肉格付協会」が規定する15レベルの肉質基準のうち最高レベルであるA5であること。もう一つは、A5の中にさらに「霜降」の程度で12レベルのBMS(牛脂肪交雑値)が定められているが、これが10以上であることだ。この二つに合格していれば、 栃木県大田原市 産の牛でなくても「大田原牛」と呼ぶことができる。中でも一人前10万円の「大田原牛ステーキ」が取れる基準に達した牛は、日本全国で年間100万頭生まれる牛の中でたった3頭だそうだ。
「大田原牛ステーキ」を食べたある人が、感激してこう言った。「これまで食べていた牛肉は牛肉とは言えないな。一切れつまんで舌に載せると、ゆっくりと溶けていく。まったく、舌だけでなくて脳みそまで溶けてしまいそうな気分だよ!」 (本文は雑誌「R25」の関連する文章をリライトしたものである) |