人間国宝 西川扇蔵氏 ― 日本の古典芸術を世界へ
日本舞踊西川流の「第九回 西川扇蔵 素の会」が去る6月6日 東京都千代田区の国立劇場小劇場で行われた。常磐津「千代の友鶴」、清元「茶筅売」、長唄「賎の小田巻」の三番。十世宗家西川扇蔵氏が平成3年から取り組んでいる素踊りのシリーズ公演の9回目となる。衣装もかつらもつけない、いわば舞踊のデッサンともいえる素踊りは、十世宗家の心技体の調和を際立たせ、客席は静かな熱気に包まれていた。
昭和3年に生まれ、昭和8年に初舞台を踏み、七歳で十世西川扇藏を襲名、平成11年重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された西川扇蔵氏の胸中には、今、わが国の最も古い伝統芸能のひとつである日本舞踊のグローバリゼーションがあるようだ。一つには、世界公演、もう一つは外国人の舞踊家の養成である。アメリカ サンフランシスコの稽古場で日本舞踊の海外普及に努めるほか、氏が理事長をつとめる財団法人日本舞踊振興財団は、平成6年の米国での大型公演開催を皮切りに、その後ドイツ、フランス、イギリスとヨーロッパへ上陸し、来年はロシアで二つの公演を計画中である。海外での評価は非常に高い。近い将来、能楽、文楽、歌舞伎に続き、日本舞踊がユネスコの無形文化遺産に選定されることを期待したい。(Nyanya執筆)
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