「ゲド戦記」に耳を傾ける
この夏休みに日本で最も注目されているアニメは、スタジオジブリが20年あまり温め続け、宮崎駿の長男宮崎吾郎が初めて監督した「ゲド戦記」である。その原作は、「指輪物語」、「ナルニア国物語」と並ぶ世界三大ファンタジーの一つで、1968年の出版以来19カ国で翻訳されている。
「ゲド戦記」の物語が感動的なのは言うまでもないが、その魅力を十分発揮させているのが音楽である。音楽制作を担当するのは、かつて「真珠夫人」などで美しいメロディを聞かせた寺島民哉で、今回は物語の雄大な場面に対して壮大な音楽を創り上げた。またスペインのバグパイプ奏者CARLOS NUNEZ(カルロス・ヌニェス)が演奏に参加しており、映画に「風の薫り、土の匂い、雑踏の人いきれ」(宮崎吾郎監督)をもたらし、映画全体に生き生きとした活力を与えている。
もう一人注目されるのは、新人歌手の手嶌葵の透明感溢れる歌声である。彼女は映画のヒロインの声を担当するほか、挿入歌の「テルーの歌」と「時の歌」を歌う。映画に深く感動すると同時に、日本にまた一人新しいスターが誕生する予感を抱かせられる。
「ゲド戦記」は心を傾けて「聴く」ことが必要なアニメである。その不思議な物語を楽しむだけでなく、その音楽を味わうことによって、いっそう深く作品を感じることができるだろう。(本文は雑誌「AERA」の関連する文章をリライトした。) |