劇団四季の「キャッツ」を観る
東京ディズニーランドが開園し、任天堂の家庭用ゲーム機が発売になった1983年、西新宿に劇団四季のキャッツ・シアターが生まれた。当時一般のミュージカル制作費は4、5千万円であったが、キャッツには何と8億円が投資された。だが、初演以来6000回以上の公演が行われて現在最も人気のある演目になっており、当初の冒険は大成功したと言えるだろう。
劇団四季と言えば、誰もが「キャッツ」を思い出す。この700名あまりの俳優とスタッフを擁する日本最大規模の劇団は、アメリカで生まれて世界中を席巻した「キャッツ」によって、日本で多くのファンを得た。役柄の容貌も性格も、すべてが「キャッツ」という題名を凝縮した感のあるこのミュージカルで、「ゴミ」の中を飛んだりはねたりしている「猫」たちのうち、三分の一が中国や韓国からやってきた俳優だそうだ。それを聞いて、このミュージカルを是非見てみたいという気持ちになった。
客席に入ってびっくりした。通路にゴミのような弁当箱が落ちている。ところがよく見るとそれは装飾であった。床も壁もこうしたゴミだらけなのである。二階席にある卵は今にも落ちてきそうだ。特に人目を引いたのはパスネットで、誰でも拾えそうに見えるが、実は床にしっかり張り付いていて取れない。通路を行くと、壁に捨てられた本がある。めくってみると、中は歴代の「キャッツ」の俳優たちの写真である。なかなかしゃれた趣向である。
ミュージカルが始まると、客席の通路に「猫」たちが集まってくる。芝居の間もしばしば「猫」が通路にやってきて、その臨場感に観客は、まるで舞台が存在しないような錯覚に陥る。それだけでなく、観客も「猫」に舞台の上に引っ張っていかれて踊ったりする。最後に「猫」たちは観客たちと握手をしにきてくれる。大感激だ。
「オペラ座の怪人」や「ライオンキング」と違って、「キャッツ」は純粋な猫の動きを見せてくれ、歌やダンスもたくさんあって、その質はたいへん高い。この日、マジック猫を演じたのは中国から来た俳優で、その宙返りの離れ業はとてもすばらしかった。彼の演技を見るためだけに「キャッツ・シアター」に行く日本人も少なくないことだろう。(本文はよしなしごとさんの『劇団四季「キャッツ」見てきました』をリライトした) |