F1日本グランプリ開催地に見る諸事情
サッカーW杯が終わった。スポーツの祭典は選手たちのプレー自体の血と汗のドラマの他に、選手個人の人生や国家、民族意識などのおぼろげな影を人々の脳裏に残し、国旗を掲げたサポーターの熱狂と共に消えていった。スポーツは純粋にスポーツたり得ることはできないのだろうか。
自動車レースの最高峰F1、この日本グランプリにもまた、ファンの純粋な想いとは別の次元の問題が持ち上がっている。1987年からF1日本グランプリの開催地だった三重県の鈴鹿サーキットが、その地位を静岡県の富士スピードウェイに来年度明け渡すことが決まったのだ。
鈴鹿サーキットはホンダがスポンサーとなっている。鈴鹿への集客のために、近鉄鈴鹿線の平田町駅が存在し、秋のグランプリ開催中の3日間に延べ30万人以上が毎年訪れた。地元への経済効果は約50億円、打撃はけして小さくはない。対する富士スピードウェイはトヨタが買収し、200億円を投入してコースを大改造し、国際自動車連盟(FIA)から最上級規格のグレード1の認定を受け来年度以降の開催権を勝ち取った。ホンダの鈴鹿サーキットは、日本で2つのグランプリ開催という道を求めて交渉する意向を固めているという。
日本を代表する二つの自動車メーカーのプライドとは別に、観光客誘致を望めるプロジェクトとして、是非前向きに取り組んで欲しいものだ。 (西岡珠実執筆) |