ロダンとカリエール展
国立西洋美術館で開催されたロダンとカリエール展は、彫刻と絵画という芸術表現のジャンルの違いを超えた芸術的思想の一致に焦点をあてた展覧会だった。彫刻家オーギュスト・ロダン(1840-1917)と画家のウジェーヌ・カリエール(1849-1906)の作品を見比べると、雰囲気が全く同じで、一人の作家の彫刻と絵画といっても違和感のないものに思えた。カリエールの、暗い背景から浮かび上がるような人物像の白いシルエットは思惟的で、内面の想いや憂いが見るものに迫ってくるようだった。ほとんど色彩のない茶がかったモノトーンの画面は、それでも十分に奥行きとボリュームを表現していて、彫刻的と言える。つまり、カリエールの絵画の立体表現がロダンなのである。この二人は象徴主義と呼ばれるが、ギュスタヴ・モローの物語的なデリケートな装飾性や、ルドンの神秘性などとはまた別な、人間の内面を表現する観念的芸術表現として、非常に似通った芸術家だったことがよくわかった。
東京で構成され、ロダンの彫刻を数多く有する国立西洋美術館で展示されたあと、パリのオルセー美術館に巡回するとのこと。本場フランスでの評価が楽しみだ。(西岡珠実執筆) |