手で見る写真展 TOUCH AND SEE
先日、表参道のスパイラルビルにある「すぱいらるガーデン」で面白い写真展を見た。
会場に入ると、すぐ脇の白い壁にスクリーンに映し出された鮮やかな航空写真が目を引いた。傍らには「Touch and see目を閉じて触ってください」のメッセージが。目の不自由な人に写真の美をわかってもらおうという風変わりな展覧会だと思った。しかし、このプロジェクトのターゲットはそれだけにとどまらないことをすぐ知ることになる。
奥へ進むと、四角い展示テーブルに写真と説明文と触って感じる立体図のセットが、いくつも並んでいた。真ん中にはエメラルドグリーンの海に浮かぶハート型のさんご礁の巨大な写真が置かれていた。写真はヤン・アルテュス・ベルトラン氏による航空写真で、世界のありとあらゆる地域の美しい情景が撮影されていた。それらを眼鏡デザイナーのアラン・ミクリがアセテート・セルロースというアイウェアで使用する素材で手で触って感じ取れるよう表現した。説明文にも点字がつけられていた。会場には盲導犬をつれた人、介助の人を伴った目の不自由な方たちが何人も訪れていた。会場の係りの女性の説明によると「目の不自由な方が、これら立体画像を触るだけで全てを理解できるわけではありません。介助のかたがたの説明を聞きながら、そのイメージを膨らませるためのものです。」ここは視覚障害者と健常者が連れ立って、共に「空から見た美しい地上」を分かち合うためのプロジェクトだったのだ。
壮大な地球の美しい一瞬を捉えた写真を見て思う。人間も動物も、富める者も貧しい者も、目の見える者も見えない者も、おしなべてこの惑星のはかない生き物であり、平和に共生していくべき存在であると。
このプロジェクトは2003年ロンドンでの展覧会を皮切りに、ヨーロッパ各地を巡回し、2006年4月4日から10日まで東京表参道で開催された。 (西岡珠実執筆) |