驚きの研究成果
まったく手を使わずに頭で考えるだけで装置を動かすという、SF小説にでも出てきそうな研究が日本で進められている。日立製作所は11月6日、脳内の血流変化を測定する光トポグラフィ装置を使い、頭の中で歌を歌うことによって外部の機器を操作する実験を行って成功したと発表した。
被験者は光ファイバーがたくさんついた計測専用キャップをかぶり、脳の前部の血液量を変化させるために暗算や暗唱などの精神活動を行う。その結果、数秒の応答速度で小さな汽車の模型が動いたり停止したりした。光トポグラフィは測定した信号を電圧信号に変換して、外部機器を駆動するのである。
太陽に手をかざすと、指と指の間が赤くなって肉が薄くなっているように見える。これは、太陽光線に含まれる可視光の中で人体への透過性が高い赤い光が透過するからである。光トポグラフィの原理もこれに似ている。頭皮に照射された近赤外線と光ファイバーによって大脳表面付近の血液量の変化を測定する。何かを考えると、その部位に酸素を送るために血液量は増大する。こうして、大脳皮質の血液量が観察できるのである。
日立製作所では1999年、運動機能を失ったALS(筋萎縮性側索硬化症)患者も意思の伝達や表現ができることを発見し、2005年にはYes/Noを判定できる装置「心語り」を開発した。
今後日立では、この先進技術を発展させて、機器の操作が困難な障害者などのために適切な福祉機器を提供するための研究を進めている。また、光トポグラフィで脳内の血液量の変化を測定することについても、さらに実用的な研究を行っている。
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