北海道の雪を運ぶ
「ああ、北海道の雪を東京に運んできたら涼しいだろうなあ!」暑い夏の日に晴れ渡った空を眺めながら誰かがつぶやいた。まさか、そんなことできっこないよ!
と思っていたら、なんと国土交通省の北海道開発局では、そのようなプロジェクトを本当に推進しているのだそうだ。北海道で冬に降った雪を夏まで保存して、船で東京に運んでビルの冷房システムに使用するというのだ。
このプロジェクトは去年から始まり、今年は東京に雪を運ぶ試みが実験段階に入っている。……ちょっとちょっと冗談でしょう?わざわざ北海道から運んでくるより、東京で氷を作った方が安いんじゃないの?
いやいや、このプロジェクトのポイントは、実は北海道との物流の「片道輸送」にあるのだ。つまり、北海道に物資を輸送して帰りは空になる船の輸送力を有効に利用しようということでこのアイデアが持ち上がり、この信じがたい実験となったのだ。資源の節約(片道輸送分のエネルギー、東京の冷房のためのエネルギーの節約など)と二酸化炭素削減に貢献するプロジェクトなのである。
かつて北海道は石炭生産地として日本各地を温める資源を送り出していたが、今回のプロジェクトが成功したら、今度は日本各地の冷房資源の供給地となるわけだ。北海道の雪が東京を冷却するという計画は、なかなか魅力的ではないか。(本文は雑誌「R25」の関連する文章をリライトした) |