本屋大賞の困惑
4月5日の晩、「2006年本屋大賞」が発表され、リリー・フランキーの「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」が大賞を受賞した。
本メールマガジンでも以前紹介したが、「本屋大賞」は芥川賞や直木賞のように作家や評論家が選ぶ文学賞と異なって、読者に最も近いところにいる書店員が選ぶというものである。彼らはまずそれぞれが「読んでおもしろかった」「もっとたくさん売りたい」本を3冊ずつ選び、その後10冊の候補作に絞り、最後にトップ3冊を選出する。
一昨年、初の本屋大賞に輝いた小川洋子の「博士の愛した数式」は、受賞前の販売数が9万8千部だったが、受賞後は一気に50万部を突破し、昨年末には文庫版が117万部に達した。去年の第二回で大賞を受賞した恩田陸の「夜のピクニック」は、受賞前の販売数が8万7千部だったが、現在はすでに25万部を突破している。今年の第三回大賞を受賞した「東京タワー〜」だけは、受賞前にすでに120万部を売り上げた大ベストセラーである。そのため、「本屋大賞は変わってしまった」という意見がある。もともとの「あまり知られていない作品を発掘するために創設した」という主旨に反するというのだ。別の見方をすれば、今年「東京タワー〜」が選ばれたのは読者の視点により近づいたとも言えるのだが、この賞自体の存在価値から言うと一つの冒険であることは間違いない。
この本を出版した扶桑社の目的は、「東京タワーの333メートルにちなんで、333万部売る」ことなのだそうだ。まあ、賞にこだわることなく、まずは読んでみましょうか? |