世界が愛用する日本語の本
世界中で人気を博した日本の著作はたくさんある。例えば、村上春樹の「海辺のカフカ」はニューヨークタイムズの2005年の「今年の10冊」に選ばれた。もちろんこうした本はすでに各国語に訳されている。しかし、日本語版しか出版されていないのに、全世界で大変人気のある著作もある。それは丸善が発行している「理科年表」である。
「理科年表」は、「暦」「天文」「気象」「物理」「化学」「地学」「生物」「環境」など科学関連のデータを載せた本で、「自然界の辞典」と呼ばれ、主として研究者や学生のために作られている。初版は大正14年(1925年)で、以後毎年最新版が編集され、今年は79冊目であり、累計250万部売れている知られざるベストセラーである。
アメリカにはスポーツ記録を記載した多くの書籍があるが、研究者の使用には提供されていない。 そこで日本の研究者が「理科年表」を持っていったところ、それが次々に広まることになり、現在 NASA (アメリカ航空宇宙局)と中国の清華大学でもこれを使用している。
約30名の監修者に加えて100名あまりの協力製作者や研究機関の人々が参加し、何度も校正を重ねて完成する。新しいデータの発表にぶつかったり、間違いを発見したりした場合は、印刷を停止して確実に間違いをなくすように努めている。
そうそう、本の最後には1901年から2005年までの105年間のノーベル賞の受賞者名と受賞理由が収録されており、これも一読に値する。(本文は雑誌「R25」の関連する文章をリライトした) |