無痛注射針2種
昨年グッドデザイン賞を受賞した無痛注射針は、テルモ株式会社が製造した「ナノパス 33」である。
この注射針は、日本全国70万人の糖尿病患者が自分で注射をするときの苦痛を和らげるために開発された。見たところは、針を細くすれば打ちやすくなりそうだが、実際には細すぎると薬液を注入するときの抵抗が増すため、かえって打ちにくくなる。また、先端を細くするのは理論的には可能だったが、製造技術的にはかなり難しかった。100あまりの企業と繰り返し協議を重ね、3年かかって金型製作と大量生産加工などにおける、様々な困難を克服してようやく完成した。
また、兵庫県のライトニックス社も、直径0.12mmの注射針を開発した。その先端は三角錐形になっており、針の側面には蚊の針を真似た極微細なギザギザがついており、痛点に接触する確率を減らし、皮膚の抵抗を小さくすることによって真の無痛注射を実現した。通常の注射針はステンレススチール製だが、この新しい無痛針は縫合手術や接骨に用いられる樹脂を使用しており、体内で溶解する特性がある。将来は薬剤を入れた針を内視鏡などの先端に装着して患部に刺し、針が溶解することによって局部治療の効果をあげることも考えられている。
無痛注射で辛くない治療。日本の医学界の努力と追求は、我々に医学の輝かしい未来を示してくれている。 |