『鉄腕アトム』、『マジンガーZ』、『機動戦士ガンダム』、『ドラえもん』、『Dr.スランプ』。これら絶大な人気を博したアニメ・漫画に共通するものは何かわかるだろうか。答えは「ロボット」である。人々は古くからロボットにあこがれ、ロボットの活躍を夢見て、架空のロボットはロボット開発に希望とモチベーションとインスピレーションを与えてきた。そして今日、ロボットはもうマンガの中のキャラクターやスクリーン上のイメージだけでなくなり、人類とともに文明を作りあげている。
日本は世界トップレベルのロボット技術を誇り、世界有数の「ロボット大国」である。今回の主人公は、ロボット先進国、日本においても先進な技術や斬新なアイデアを持つロボット達である。(謝晨執筆)
HRP-3 promet Mk-U
川田工業・産総研・川崎重工業が合同開発したものである。腕や手の自由度は高く、より複雑な作業にも対応できる。1時間100mmの雨にも耐えられる防塵・防滴機能を備え、滑りやすい路面での歩行が可能になった。また、両足だけではなく片腕も添えて体重を支えつつ、もう片方の腕で作業を行なうことも可能である。

FT
「ロボットは男性である」という先入観はどうしてもあるだろう。FTは「世界一美しいロボット」というキャッチフレーズで公開された、頭は小さく、胴は細く、足は長く、ほぼ6頭身というスリムな体型の女性のロボットである。ひざを伸ばした美しい「モデルウォーク」は、プロのファッションモデルから直接指導してもらい、そのしなやかな身のこなしを反映させたプログラムになっている。

 

アクトロイド−DER 2
「ロボット」よりも「動く人形」という表現のほうが適切であろう。ロボットの特徴ともいえる「ハードボディ」や「ぎこちない動き」は全く無く、全身を人間の皮膚に近いシリコンゴムで覆い、眼球やまつげ、髪型、表情に至るまで本物の人間にそっくりである。司会や案内・接客などのために開発され、2005年の万国博覧会「愛・地球博」でも接客ロボットとして業務をこなした。

番竜
世界初!番犬ならず番竜は留守番するためのロボットである。外出先から携帯電話で番竜を遠隔操作し、室内の様子を見ることができる「遠隔操作モード」、赤外線センサー・ニオイセンサーが作動し、異常があるとアラーム音を発し、携帯電話に室内の様子を送る「留守番モード」、頭や背中をなでるとお座り、お手などする「レスポンスモード」がある。

ハイパーロボ MRX-06
プールなどの水中で掃除してくれるロボットである。スイッチをONにして、タイマーを設定するだけの簡単操作である。ジグザグ走行により万遍なく清掃することができ、ゆっくりした走行で沈殿物を舞い上がらせずにきれいに取り除くことができる。機械なのに水に強いどころか、長時間水中にもぐることができるのは、機械の革命ともいえるだろう。

RobotchU
神戸発の産学官(産業界・大学等・公共機関)コラボレーションロボットで、神戸らしいセーラー服が爽やかでかわいいらしい印象を与える。チラシ配りが専門のRobotchUは近づく人を検知すると、椅子から立ち上がり、前へ歩み寄ってあいさつし、そして首をかわいくかしげながらチラシを手渡しする。施設や観光の案内もする。

Kenaf
千葉工業大学の「未来ロボット技術研究センター」によって開発された、人命救助のためのレスキューロボットである。タイヤは戦車のようで、瓦礫や障害物があってもスムーズに乗り越えられ、人の体温を感じ取って、意識を失った人を感知することができる。さらに自分が走行した場所の地図を自動で作ることができ、人命救助の時間短縮が可能になった。

 

よりそいifbot
シニア向けに研究開発されたパートナーロボットである。脳の体操をする15のテーマで脳の活性化を促進し、毎日使い続けることで健康寿命を延ばし、また簡単な会話をすることで高齢者の孤独感や寂しさを和らげることができる。人間でもない、ペットでもない、新しい家族がシニアの生活をいっそう楽しませてくれるに違いない。

パロ
一見ぬいぐるみのようだが、実は一般家庭でのペット代替や医療福祉施設におけるセラピーを目的としているロボットである。1台1台手作りのため、顔つきなどが異なり、体温もあり、本物の動物みたいだ。「今年のロボット」大賞2006で優秀賞受賞、小泉前首相などの著名人もパロを絶賛していた。「世界でもっともセラピー効果があるロボット」としてギネスブックにも認定されている。

Chapit
スムーズに自然な会話が楽しめ、音声による命令で家電製品をコントロールする機能や、遠隔地からロボットを操作しカメラ画像を確認することができる防犯機能がついている。赤ちゃんの愛らしい表情をデザインに取り入れていて、丸みを帯びた形がかわいい。「抱きしめたいロボット」でパロに続いて2位に輝いている。

Q.taro
ソニーが開発した球型ロボットで、手を近づけると自動的に電源のオン・オフを行ったり、障害物を認識して自律的に回避したり、複数のQ.taroを置くと、Q.taro同士が協調して動いたりできる。またオーディオ機器を接続すると、音楽にあわせて動く機能もソニーらしい。人とコミュニケーションをとることで感情表現のバリエーションが増えるといった、成長の要素も搭載している。

 

MANOI
ロボットクリエーター高橋智隆氏によるロボットキット。中学生の後半から組み立て可能で、所要時間は3時間〜5時間くらいである。曲線を多用したキュートなデザインと比較的手ごろな価額(15万)で、ロボットマニア層以外でも楽しめる。パワフルかつ軽快で、パソコンでオリジナルのモーションをつけることができる。自分で作って、所有していく過程を楽しむこともできる。

Robovie-i
ドライバーといった簡単な道具で、1時間程度で組み立てることができるロボットキットで、初心者向けの商品である。付属のソフトで、ロボットのポーズ、モーション、一連の行動の作成をマウス操作で簡単に行うことができる。体を左右に振って重心を移動しながら歩行する姿はかわいらしく、付属の目や口のシールで好きな表情を作ることができる。

Robovie-MS
Robovie-iの上級編だが、外見はがらりと変わって、カッコイイ仕様になっている。組み換え次第で人間型以外にも4足型のロボットなど、いろいろな型のロボットが作成可能で、付属のソフトをインストールしたパソコンを使って、動きをつけることができる。ハード・ソフト両面から自由な発想、考える力を育てることができ、教材にも適している。

日本はロボット研究者や愛好者を育てるのに絶好な環境である。日本国内で開催されている主なロボット競技だけで15個ほどあり、様々な人を対象に様々な課題、ルールで競技を開催している。例えば、二足歩行ロボットによる格闘やデモンストレーションを競う「ROBO-ONE」や迷路から走破するのを競う「マイクロマウス」などがあり、いずれも参加者が製作したロボットで出場する。また数多くのアニメロボットが一堂に会し戦うインタネットゲーム「スーパーロボット大戦」やロボット専門誌「ロボコンマガジン」など、気軽にロボットを楽しめるゲームや雑誌もある。

技術や社会の進化に伴って、ロボットはますます身近な存在になってきて、今後もこの傾向は強まるであろう。ロボットは私たち人間に便利と癒し、夢と楽しみをもたらしてきたが、私たちもロボットに愛情を注ぎ、大切にしなければならない。ちょうど松井龍哉の言う「人間と花の関係のように」である。ロボットが花になる日をともに夢見て・・・。

日本のロボット業界を論じるとき、ロボットに姿かたちを加え、生命を吹き込むロボットデザイナーを紹介しないわけにはいかない。ロボットデザイナーを紹介するとき、この未開拓分野の先兵である松井龍哉もまた避けては通れない。

松井龍哉は1969年東京生まれ、1999年北野共生システムプロジェクト研究員として初めてロボットデザインに携わり、ヒューマノイドロボット「SIG」「PINO」でグッドデザイン賞を受賞した。その後「フラワーロボティクス株式会社」を設立し、数々のヒットロボットを世に送り出してきた。

「PINO」は幼児を模して作られていてヨチヨチ歩くことしかできない。「力強くて逞しい」ロボットの固定観念を払拭し、人間と機械の「弱さ」をテーマにしている。宇多田ヒカルのプロモーションビデオにも登場している。

「Posy」はフラワーガール(結婚式で花嫁のサポートを行う)をモチーフにしている。3歳の女の子の設定で、天使の象徴として人々に幸せの一端を分け与えるイメージである。2001年、ルイ・ヴィトンのショーにも出演している。

「Palette」はマネキンロボットで、ショーウィンドウの前を通る人の動きを感知して、その方向に合わせてポーズをとる。イタリアの科学館での永久展示が決まり、表参道にあるルイ・ヴィトンのショーウィンドウにも展示されている。

「Posy」のコンセプトであるフラワーガールや、社名の「フラワー・ロボティクス」に花が共通している。松井龍哉はロボットを「心のパン」、「人を幸せにする存在」、「人間が愛情を抱く対象」と捕らえていて、人類と共生してきた花にイメージを重ねていたのである。いつかオペラ座でプリマドンナと踊るロボットを作る日を夢見ている。(C)Flower Robotics Inc.

Flower Robotics http://www.flower-robotics.com/



まぐまぐ(HTML・TEXT)、melma(HTML)、E-Magazine(HTML)、メルマガ天国(HTML)、
MailuX(HTML)、 Yahoo!メルマガ(HTML・TEXT)、MAG Bee(HTML)、カプライト(TEXT)、
めろんぱん(TEXT)、マガジンライフ(TEXT)、RSSmag(RSS)