暖かい風と共に、四月が静かに訪れた。
目黒川沿いの桜も満開の花を咲かせ、遠くから見るとピンク色の綿毛のように見える。桜の花の雲が、ゆったりと楽しそうに揺れている。
日本では桜の開花と共に、若者たちが新しい一歩を踏み出す大切な季節を迎えている。入学試験の難関を突破した新入生は、晴れやかな表情で高校や大学の門をくぐる。会社の新人たちは、胸いっぱいの希望を抱いて、真剣な表情で入社式に臨む。
夕方や休日は、桜の花の下がたくさんの人々でにぎわう。老若男女や犬を連れた人たちなどが楽しそうに花見をしている光景は、この平和な島国の豊かさを感じさせる一幅の絵のようだ。
日本人がよく言う「花より団子」そのままに、飲み食いして泥酔している人もいるが、いずれにしてもこの春の活気に満ちた雰囲気に包まれた幸せな時間を過ごすのは、日本人にとって特別に喜ばしいことなのであろう。
五分咲き、八分咲き、満開……日を追って美しさを増す桜と共に、新社会人たちは胸を張ってまだ通いなれない通勤の道を歩き、小学校に上がったばかりの少女たちが大きな赤いランドセルを背負って飛び跳ねながら彼らを追い越していく。すでに引退したお年寄りたちの中には、優しいまなざしで満開の夜桜を見上げて、厳しい冬を越えた草木の生命力の強さを思い、自分の夢のような人生を感慨深く思い返す人もいるだろう。
花見の席では、杯を挙げて声高らかに歌う者もあり、酔って歓談する者もあり、エイプリル・フールにかこつけて他愛のない冗談を飛ばす者もある。あるいは、これこそ桜の本当の楽しみ方なのかもしれない。
人々が新しい人生の一歩を踏み出す四月は、実にすてきな季節なのである。 |