時間を守り細部を完璧に (中国)鄭琳
日本は人口過密な島国であり、特に東京はそれが甚だしい。だが、混乱する場面はあまり見かけない。トイレではみなきちんと並ぶし、地下鉄のエスカレーターでは自主的に左に寄って整列し、右は急いでいる人のために空けておく。地下鉄のドアが開くと、みなドアの両側にさっと二本の列を作り、降りる人が済んでからぞろぞろと乗り込む。北京の地下鉄のピーク時のような、乗る人が殺到して降りる人が降りられなくなりそうになるというあの混乱は見られない。交差点では人も車も交通規則を厳格に守り、争いは起きない。深夜で車が走っていなくても、歩行者は青信号になるのを待って道を渡る。
ある時、東京の街角で 20 歳ぐらいの女性がコーラの入った紙コップを引っくり返してしまったのを見かけた。服がコーラだらけになった彼女は、まず地面に散乱した氷を拾い、ティッシュを出して地面を拭き、すっかりきれいになった後で立ち上がって自分の服の汚れを拭き始めた。またある時、東京ディズニーランドで子どもがポップコーンの袋を開けて、地面にぶちまけてしまった。子どもの母親は、しきりに周囲の人に「すみません、すみません」と謝りながら、地面に落ちたポップコーンを拾い、遠くまで転がっていった小さなかけらまで拾っていた。
日本の街では、大きな声で話したり争ったりする人をほとんど見かけない。携帯を持っている人は多いが、着メロは耳にしないので、私は日本の携帯は全部バイブレーション方式なのかと思っていた。日本人の家庭を訪ねたとき携帯の着メロを耳にし、それについて質問したときに初めて、彼らが公共の場所で着メロを鳴らすのは迷惑だと考えて、家に帰ってからマナーモードを解除するのだということを知った。
我々が日本の若者と討論会を行なった時、日本人は中国側の発言が一言もわからないのに、真剣に発言者を見つめ続けていた。中国のように通訳が訳すときになってからようやく真剣に聞くということはしなかった。討論会の司会者は発言者にマイクを渡す責任があるが、日本側の司会者は一人の発言が終わると、いつもマイクを持って次の発言者のところまで走っていくのであった。
日本で感銘を受けたことは他にもある。例えば完璧な立体交通や、東京の地下鉄が都市全体に張り巡らされていること。都市と田舎の差が少なく、僻地の農民と東京のホワイトカラーの生活があまり違わないこと。自動化が進んでおり、自動券売機や自動販売機があちこちにあること。裸の土地がほとんどなく、緑化できるところはすべて緑化していること。しかし、私にとって最も印象深かったのは、やはりあの、まず地面を拭いてから自分の服を拭いた女性であり、あのマイクを持って走った、姿はちょっと滑稽だったものの、発言者を尊重する気持ちが十分に表れていた司会者なのである。経済の発展は、数十年あれば奇跡を起こすことができるかもしれないが、国民の素養を全体的に向上させるには、もっと長い時間ともっと深い努力が必要となろう。
「中国青年報」 より(本編集部で一部削除した) |