ごく普通の休みの日の午後。暖かい日の光が窓から室内に差し込む、温かくてちょっと怠惰な時間。テーブルのコーヒーからいい香りが漂い、CDプレイヤーから大好きな曲が流れてくる。こんな心地よい午後に、一冊の本があったらとてもすばらしい。午後の時間が過ぎるのも忘れ、本の中に浸りきり、著者の思い出を味わうと同時に、自分が子供の頃に家族と一緒に過ごした楽しい時間を思い出す。この本は、一青妙さんの「私の箱子(シャンズ)」である。
著者の「一青妙」という名前を聞いて、どこかで聞いたことがあると思われるかもしれない。そう、彼女は有名な歌手である一青窈さんのお姉さんである。歯科医である一青妙さんは女優でもあり、多芸多才だ。今回のエッセイ「私の箱子」は彼女の初めての本である。冒頭には、この本を書くことになったいきさつが書いてある。家の物を片付けていた時、ふと一つの赤い箱を見つけた。箱の中に入っていたものは、どれも記念としての意味があるけれど、普段は忘れていたものばかりだった。
すでに亡くなった母親の日記、両親の結婚前の手紙など。これらの物を通じて、両親や妹との少しぼんやりとした、しかし温かい気持ちにさせてくれる記憶がよみがえってきたのだ。著者はインタビューを受けた時、この本を書くために、母親が書いたたくさんの手紙や病気の時の日記などを読み、両親に関するすでに遠くなってしまっていた記憶が呼び起こされたと語っている。お互いに遠く離れていても、自分たちが常に「家族」という二文字で強く結ばれていることを感じたという。この本を読む私たちも、自分の家族を改めて見つめて、家庭の大切さを再び感じることができるのではないだろうか。
これは、家庭のような温かい雰囲気が感じられるエッセイ集である。この本を手にとってゆっくり味わう時、我々は一青妙さん一家の小さなぬくもりを感じると同時に、自分の家庭や家族に関する、些細だけれども心温まる記憶を思い起こすことができる。陽光に満ちた午後、一冊のすてきな本、大好きな音楽、香りのよいコーヒー、これだけで充分幸福な気持ちになれる。でも本当は、思い出のために微かに笑みの浮かんだ口元こそ、この美しい午後の最も幸せな情景と言えるだろう。(小雅執筆)