最近のハリウッド映画で、よくこんなシーンを見かける。会議の記録を昔ながらのボードではなく無造作にガラス窓の上に書くと、たちまちデジタルデータに変換される。ガラス窓だと思ったものは、実はコンピュータの透明なタッチパネルだったのだ。必要なデータは簡単に調べられ、一目瞭然である。こんな高度な技術は、現実の世界からは遠く隔たったものだと思われがちだが、実は近い将来、このような技術を用いたカーナビ表示システムが、知らないうちに我々の生活に入り込んでいるという可能性があるのだ。
自動車製品の開発と製造を行うデンソーは、自動車用としては世界最大の表示サイズを持つ「ヘッドアップディスプレイ」を開発した。「ヘッドアップディスプレイ」はカーナビ情報を自動車のフロントガラスに表示するもので、走行中に進行方向の矢印などがフロントガラスに現れ、実際の景色と重なって、より高い視認性をもたらす。運転者は視線を進行方向前方から外さないままで必要な情報を得ることができる。このシステムでは、走行速度や制限速度なども表示できる。現在この技術の製品化は、2015年を目標としている。
一方、パイオニアは今年、新型のカーナビを発売した。2012年発売の7種のサイバーナビの最大の特徴は、AR HUD(ヘッドアップディスプレイ)に対応することで、それによってナビ画面をフロントガラスの前方に映し出すことができる。HUDドライバーモード、HUDマップモード、HUDハイウェイモード、HUD交差点リスト表示の4つのモードが表示可能だ。HUDドライバーモードではルート案内矢印や案内地点までの距離などを表示する。HUDマップモードはシンプルな地図表示である。HUDハイウェイモードは高速道路走行時に表示され、直近3施設の情報や渋滞状況が表示される。HUD交差点リスト表示は赤信号の検知を行ったり、青信号への変化時に注意を促したりする。レーザー光線で描いた情報と現実の景色を重ね合わせるのだが、ずれのない重ね合わせは、サイバーナビでなければできない高精度測位技術によっている。
2011年のタイプに比べて起動時間は20秒短縮され、ルート探索時間も大幅に高速化した。実際の画面を見てみると、まるでコンピュータゲームの表示のようにも見える。ゲームと共に育った世代にとっては、このようなカーナビこそ直観的で最も使いやすいものなのかもしれない。(緋梨執筆)