戦後の日本で最も有名なカメラマンと言ったら、誰もが荒木経惟の名前を挙げるだろう。1940年東京生まれの荒木経惟は、いつも小さな丸い眼鏡をかけ、まばらになった髪を、ちょっと笑いを誘う猫の耳のような形にしている。これまでの半世紀にわたるカメラマン人生で、彼はたくさんの人々に衝撃を与えるような作品を創り出し、論議を巻き起こしてきた。彼の作品について人々は、ポルノと芸術の境界について論争し、カメラ芸術と倫理観との衝突までもが論じられた。彼と妻の陽子さんとの愛情の物語は、彼らの共同の撮影作品や、共著「東京日和」によって今日まで伝えられ、これからも伝えられていくだろう。
1971年、荒木経惟は自分の新婚旅行をテーマにした作品集「センチメンタルな旅」を出版した。そしてその後のカメラマン生活で、200冊以上の出版物において、自分のレンズを東京の街、花、風景に向け、さらに性欲や変態行為も、そして病気で亡くなった妻をも撮影した。これらの作品は荒木経惟を日本の芸術界のトップに上らせると同時に、彼を世界で最も論争の多い芸術家の一人にすることともなった。もう一人の有名なカメラマン、篠山紀信は、荒木経惟が死者(亡くなった妻)の写真を「センチメンタルな旅」シリーズの三冊目「冬の旅」に載せたことで、彼と絶交した。だが二人はその後、芸術に執着する信念を理解しあって和解した。
今年、荒木経惟は東京の代官山と中目黒で同時に写真展を開催する。今回の写真展の大きな特徴は、すべての作品がポラロイドカメラで撮影された、サイズが20×24インチの写真であることだ。そのため、今回の展覧会の名前は「荒木経惟by 20×24 INSTANT FILM」となっている。アメリカのポラロイド社がフィルムの製造を停止したため、今回の展覧会ではIMPOSSIBLE社のフィルムが使用された。また今回モデルを務めたのは、長年にわたって「荒木のミューズ」と呼ばれているKaoRiである。荒木は今回の写真展について、自分が表現したいのは被写体のその時の状態であって、空間や造型を記録しているのではないと語っている。そして、「時を撮っている。時をフレーミングしている。」と強調している。この写真展は8月14日から9月14日まで開催され、我々は1ヶ月という時間をかけてゆっくり巨匠の作品を鑑賞することができる。(凱特執筆)