音楽が全人類共通の言語であるならば、咲き誇る花は人類共通の「美」の象徴である。踊り絵師であり、パフォーミングアーティストでもある神田サオリさんは、この人類共通の言語と「美」の象徴を思う存分に発揮している。踊り絵師とは、音楽に合わせて踊りながら絵を描くアーティストである。踊り手と呼んだら美術的な成果の意味が欠けてしまうし、絵師と呼べば絵を描く過程の身体の優雅な律動がもたらすビジュアルのすばらしさが見過ごされてしまう。両者を完璧に結合し、美術と舞踊の芸術的エネルギーを共振させ、両者を単に合わせたものを超越した高みに到達させたのが、踊り絵師なのである。
踊り絵師神田サオリさんが最も得意とするイメージは花である。色も形も様々な、咲いた花だ。サオリさんが音楽に合わせて繊細に身体を動かし始めると、筆先から自然に流れ出すものの多くは、精緻ではかない、あるいは生き生きとして美と力が一体となった花たちである。大自然の賜物である花、人の心をゆさぶる音楽、命の情熱を表現する踊り、具象と抽象の結晶である絵画、これらの中には切り離すことのできない共通点や関連性があるのかもしれない。そのために、それらを結合した時に渾然一体となり、すばらしい一つの芸術作品になるのだろう。
5月末、神田サオリさんは絵筆を携えて香港を訪れ、ある高級和食レストランで壁画の製作を行った。日本料理で最も趣向が凝らされるのは盛り付けである。色彩についても造型についても、どの皿の料理も精巧で細緻に作られて、心血が注ぎ込まれたインスタレーションのようである。料理をこのように丁寧に盛り付けるので、店内装飾も当然優雅なものでなければならない。仕事中のサオリさんはイヤホンをつけて製作に集中した。いつものすばらしいパフォーマンスと同じように、彼女の独特の色彩とラインが音楽に合わせて徐々に流れ出し、次第に花開いていく。何枚かの絵が、高い場所、あるいは低い場所にとバランスを取って真っ白な壁面に掛けられていく。さらに、蔓や霞のような曲線が絵と絵の間をつないで描かれ、壁画の統一性を増し、生命の流れるリズムを際立たせる。心のままに、インスピレーションで描かれた「神田流」の美しい花々は、こうして香港の和食レストランの壁に咲き誇り、時間が止まったように、永遠に枯れることはない。
7月5日は神田サオリさんの誕生日である。そして、7月15日、サオリさんはこれまで彼女を応援してきてくれた人々に感謝を捧げるために、渋谷で盛大な「活動十周年記念パーティー」(SAORI’An 10th Anniversary party [再 会 宇 宙])を行う予定だ。彼女はよくブログの最後に「描幸」と書く。これは「絵を描くことの幸福」という意味だろう。彼女は応援してくれる人々に対して感謝しているが、踊り絵師の描く絵画の美しさと幸せをみんなに伝えてきた彼女自身もまた、周囲から感謝の気持ちを伝えられることだろう。心からの感謝の気持ちを込めて、神田サオリさんの誕生日を心待ちにしている。(李薊執筆)